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【原発汚染水を海に流すな】「海洋放出などさせないぞ」いわき市小名浜で「海の日アクション」 海洋放出開始は8月21日~31日?「何としても止める」と300人がデモ行進

「海の日」の17日午後、原発汚染水の海洋放出計画に反対する「海の日アクション2023 汚染水を海に流すな!~海といのちを守るパレード~」が福島県いわき市小名浜のアクアマリンパークで行われた。福島の市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」(織田千代、佐藤和良共同代表)と「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」の共催で、約300人が参加。集会とデモ行進で原発汚染水の海洋放出反対を訴えた。2021年4月に菅内閣が海洋放出方針を決定してから2年。反対する人々の声は無視され続け、国と東電は来月にも海洋放出開始を強行しそうな情勢だ。海に流すなと訴えている人々の言葉をまとめた。ぜひ自分事として考えて欲しい。
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【「文書約束を守れ」】
 最初にマイクを握ったのは、「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の織田千代さん。
 「たくさんの反対の声があり、海洋放出以外の処分方法が提案されていたにもかかわらず、その声を無視するかのように着々と計画が進められ、今夏を迎えてしまいました。原発事故によって否応なく拡げられた放射能。少しでもその影響を抑えようと多くの人々が長い間努力して、ようやくここまで来たのです。再び人の手で放射能を拡げるということは決して許されないことです」
 「国も東電も『基準値以下に薄めて流すから問題ない』と言っています。薄めないと流せないもので、処理が完全にできていない『汚染水』だということです。どんなものが、いつまで流されるのか分かりません。間違いなく次の世代、その先までも汚染された海を手渡すことになってしまいます。『廃炉のため、復興のため海洋放出は避けて通れない』として、国と東電は流す流すと言っています。いったいなぜ、そんなに急ぐのでしょうか?そんな復興が本当の復興でしょうか?『関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない』という文書約束があります。約束をどうかしっかり守って、海洋放出をストップして欲しいです」
 「小名浜機船底曳網漁業協同組合」専務理事の柳内孝之さんは、昨年に続き海洋放出をしないよう訴えた。
 「出荷制限のかかった水産物がゼロになったため試験操業は2020年3月で終了。昨年の福島県沿岸漁業の水揚げ量は5500トン程度。震災前と比較して2割程度ですが、着実に増えてきています」
 「海洋放出に反対する一番の理由は『風評被害が再燃する可能性を否定できないから』です。流通の妨げになり得る行為を見過ごすわけにはいきません。海洋放出計画を再検討して欲しいです」
 柳内さんは「不信感」を何度も口にした。
 「国と東電は、『関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない』と文書で約束しています。その約束を破ろうとしていることに不信感を抱いています。ALPS処理水の処分方法を決定する過程は結論ありきで、一方的に押しつけてきています。地方議会や首長、農林漁業者、観光業者などが海洋放出に反対や慎重姿勢を示しています。しかし、政府は聴く耳を持っていないようです」
 「IAEA(国際原子力機関)は海洋放出計画を『国際的な安全基準に合致している』と報告しました。しかし、タンクに保管されている水はほとんどが安全基準を超えています。原子炉建屋を通った水は多種の放射性物質が含まれており、浄化したとしても処分は慎重に検討すべきだと私たちは以前から主張しています。この先30年以上、何のトラブルもなく確実に放射性物質を除去できるのいでしょうか。廃炉は何年後に終わるのでしょうか。不確実な点が多すぎます」
 そして改めてこう言った。
 「海洋放出するべきではありません」

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①「『関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない』という文書約束を守れ」と訴えた織田千代さん
②「小名浜機船底曳網漁業協同組合」専務理事の柳内孝之さんは「海洋放出計画を再検討して欲しい」と語った
③鈴木譲さんは魚類宇野免疫学の専門家としての立場から「水産生物に悪影響を及ぼす汚染物質を垂れ流す東電の行為は犯罪行為」と語気を強めた
④大熊町から会津若松市に避難している母親は「汚染水を海に流すことが『大熊町の復興』なのですか?ふざけるな」と怒った
⑤「流されてしまえば、われわれ被害者が加害者にされてしまう。何としてでも海洋放出を止めましょう」と訴えた佐藤和良さん

【「水産資源保護法違反だ」】
 「汚染水が放出されると、真っ先に影響を受けるのが海の生物です」
 鈴木譲さん(東京大学名誉教授、NPO法人「高木仁三郎市民科学基金」理事)は、魚の専門家の立場から海洋放出計画に反対し続けている。
 「魚類の免疫学の知識と経験を活かして,『いわき放射能市民測定室たらちね』の原発沖の海洋調査に参加し,そこで採集される魚の内臓に異常がないか調べています.詳細は検討中ですし、人が食べて問題があることではないと思っていますが、原発周囲の漁業禁止区域内にいる魚に,腎臓や脾臓おかしな点が見つかっています。何が起こっているのか分からないところに何が起こるか分からないものを流すのですから、何が起こるか分からない。とんでもないことが起こるのではないかと私は思っています」
 鈴木さんは「海洋放出は水産資源保護法違反だ」と指摘した。同法は、第4条で「水産動植物に有害な物の遺棄又は漏せつその他水産動植物に有害な水質の汚濁に関する制限又は禁止」を明記している。
 「水産生物に悪影響を及ぼす汚染物質を垂れ流す東電の行為は犯罪行為です。政府や東電幹部など海洋放出の責任者は刑事訴追されるべきです。実際に、工場から廃液を垂れ流したことで実刑になったケースもあります。放出されてしまってからも調査を継続して、敵の悪事の決定的な証拠をつかみたいと思います。力を結集して中止に追い込みましょう!」
 大熊町から会津若松市に避難している母親は、緊張と怒りで声を震わせた。
 「会津若松市内で今月6日に行われた意見交換会に参加しました。敷地がいっぱいで海に流すしかない、と言っていました。『廃炉にするために燃料デブリを取り出さなければいけない』とも言っていました」
 意見交換会では、参加者から「中間貯蔵施設があるじゃないか」という意見が出たという。
 「官僚は『大熊町民や双葉町民の心情を思うと海に流さざるを得ない。(陸上保管は)大熊町や双葉町復興の妨げになる』と答えました。『大熊町の復興のため』って何だよ!と思いました。『大熊町の復興』って何ですか?汚染水を海に流すことが『大熊町の復興』なのですか?そういうときばかり大熊町民を…ふざけるな!ですよ」
 同じく東電の柏崎刈羽原発を抱える新潟県からの参加者も登壇。
 「原発反対刈羽村を守る会」の武本和幸さんは「東電は常に嘘をつく。そして国はそれを擁護する。この繰り返しが今日の結果だと思います」と語った。6月議会で「福島原発事故による汚染水放出計画の再考を求める意見書」を可決した津南町議会の小木曽茂子町議も海洋放出反対を訴えた。

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①②集会後に行われたデモ行進。強く照りつける陽射しに負けまいと声をあげた
③④⑤集会に参加した人々は、思い思いの表現で「海洋放出反対」を訴えた

【「福島だけの問題ではない」】
 集会を締めくくったのは、織田さんとともに共同代表を務める佐藤和良さん(いわき市議)。国も東電も海洋放出の開始時期を明言していないが、佐藤さんによると8月16日から31日の可能性が高いという。
 「いわき市内にある海水浴場(久ノ浜・波立、四倉、薄磯、勿来)の海開き期間は8月15日で終わります。さらに、9月1日からは底引き漁業が始まる。だから、8月16日から31日までの間に流し始めてしまおうというのが岸田首相の魂胆のようです。こんなことは認められません」
 楢葉町の「岩沢海水浴場」は8月18日まで、相馬市の「原釜尾浜海水浴場」、新地町の「釣師浜海水浴場」は8月20日までの開設を予定しており、国や東電が海水浴への影響を考慮して海洋放出を強行するのであれば、8月21日から31日までに流し始めるとみられる。実際、公明党の山口那津男代表は今月2日、「海水浴シーズンは避けた方がよい」と述べている。
 ただし、海水浴シーズンを避けたとしても政府方針が変わらない限り、根本的な解決にはならない。言うまでもないが、佐藤さんたちは条件闘争をしているのではない。海洋放出そのものをやめて欲しいと訴え続けている。
 「いったい誰の同意を得て流すのか。誰も同意などしていません。数十億円もの予算で電通などを使って『安全PR』を展開して、世論調査で少しずつ(賛成の)数字をあげるという汚い手を使っています。流されてしまえば、われわれ被害者が加害者にされてしまう。こんなことはあってはならない。何としてでも海洋放出を止めましょう。あきらめずに行動し続けましょう」
 参加者は集会の後、海洋放出反対を訴えてデモ行進をした。忘れてはならないのは、海洋放出計画は漁業者だけの問題でも福島だけの問題でもないということだ。デモ行進を遠巻きに嘲笑したり、他人事のように装っていいはずがない。
 織田さんは言う。
 「宮城、茨城をはじめ日本全国から、そして韓国や中国、太平洋諸国など海でつながる海外の国々からも多くの反対の声があがっています。海は広く、大きく、数え切れない命のかたまりです。豊かな海の恵みに包まれている私たちの暮らしを決して忘れない。そして原発事故後の数え切れない努力を無駄にしないためにも、いまこそ声を揃えて海洋放出のストップを叫びましょう」



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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