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【原発避難者から住まいを奪うな】「これでも『人権の最後の砦』か!」〝追い出し訴訟〟控訴審がわずか30分で審理終結 国際人権法も無視して即日結審した仙台高裁

福島県が2人の区域外避難者を相手取り国家公務員宿舎からの退去などを求めて〝追い出し訴訟〟を起こしている問題で、仙台高裁第3民事部(瀬戸口壯夫裁判長)が控訴審の審理を即日結審させたことに支援者や代理人弁護士から怒りの声があがっている。7月10日に行われた第1回口頭弁論はわずか30分で終了。瀬戸口裁判長は怒号が飛び交うなか、震える手で審理終結を宣言。判決日を9月27日に指定し、逃げるように退廷したという。国際人権法をガン無視して福島県の主張を全面的に採用した一審・福島地裁判決に続き、今度はまともな審理すら放棄した仙台高裁。支援団体は、弁論再開を求める声を届けようと「はがき作戦」を始めた。
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【「いまや裁判所は人権侵害の最前線」】
 「たった30分での幕切れでした。裁判所は審理拒否する姿勢を徹底的に示したわけです」
 7月31日に行われた「子ども脱被ばく裁判」控訴審の報告集会。柳原敏夫弁護士は怒りを爆発させた。
 「〝自主避難者〟に仕掛けられた人権侵害裁判。しかも、世界が注目する人権侵害裁判のひとつです。2017年、国連・人権理事会のUPR(普遍的・定期的審査)でポルトガルは日本政府に対し『原発事故のすべての被災者に国内避難に関する指導原則を適用するべきだ』と勧告しました。日本政府は建前では2018年3月に受け入れることを表明。ところが福島県は2020年3月、区域外避難者を追い出す裁判を起こしました。日本政府はこれを制することなく黙認しました」
 「国内外で二枚舌を使うという偽善的な態度。これを是認したのが一審・福島地裁の判決でした。国際人権法上の居住権、国内避難民は強制的に追い出されないことが保障されているということを主張しましたが、福島地裁は一行足らず、応答いませんでした。あまりにも無内容で薄っぺらだったので、まったく論外。国際人権の問題をまったく取り上げないのはおかしいです。さあ、これから原判決の誤りを徹底的に審理し直すんだ、福島地裁がやらなかった審理を一からやるんだということで、第1回口頭弁論に臨んだのです」
 一審・福島地裁判決から2カ月後の3月13日に提出された「控訴理由書」には、次のように綴られている。
 「原判決は本件建物の明渡しの可否の判断にあたって、一方で加害者である国側に、本件建物の完全な所有権を回復するため控訴人を『強制退去させることが真にやむを得ないという事情』が現実に存在していたか否かについて1行たりとも言及せず、他方で被害者・避難民である控訴人が本件建物から明渡しを余儀なくされた場合に控訴人及びその家族にいかなる窮乏をもたらすかについても1行たりとも言及していない」
 仙台高裁は福島地裁が放棄した具体的審理に踏み込むどころか、まさかの即日結審。抗議の声で裁判長の声はかき消され、裁判長の手は震えていたという。
 「一審できちんと審理されていれば良いのですが、福島地裁が何もしなかった。やっとまともに審理してもらえると思ったら蹴飛ばされました。何もしないで結論を出すんだと。教科書では裁判所は人権の最後の砦と書かれていますが、いまや裁判所は人権侵害の最前線の攻撃基地になってしまっています。われわれは民主国家にいるのではなく、アジアの独裁国家の仲間入りをしたんだと確信せざるを得ませんでした」

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仙台高裁が控訴審を即日結審したことに「教科書では裁判所は人権の最後の砦と書かれていますが、いまや裁判所は人権侵害の最前線の攻撃基地になってしまっています」と怒りを爆発させた柳原敏夫弁護士


【国際人権法から逃げる司法】
 今年1月13日に福島地裁(小川理佳裁判長)で言い渡された一審判決は、原告・福島県の主張を全面的に認めた。
 退去済みの避難者には未払い家賃(131万8647円)の支払いを、退去できていない避難者には明け渡しと未払い家賃(147万5268円)と明け渡しまでの家賃(月額6万4863円)の支払いを命じた。傍聴席が騒然とするなか、小川裁判長は逃げるように法廷を後にした。その間、わずか40秒だった。
 しかも、柳原弁護士が指摘するように、国際人権法上の論点については、わずか1ページ余しか判決で触れられていない。
 社会権規約第11条1項について、判決は「権利の実現に向けた措置をとるべき政治的責任を負うことを明言したもの」、「個人に対し、即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない」とする最高裁判決を引用。
 避難者たちの居住権について「一時使用許可の期間が満了した場合において、社会権規約によって、期間経過後も本件各建物での居住を継続する具体的権利が保障されるものではない」などと否定した。
 一審では被告(避難者)側が国際人権法の専門家である青山学院大学・申惠丰(シンヘボン)教授の意見書を提出している。
 申教授は、福島県による住宅無償提供打ち切りを「放射線被曝防御の観点からはおよそ正当化できない」、「福島県の本件明渡請求は明らかに違法性を帯びている」と結論づけた。しかし、これも小川裁判長は〝ガン無視〟した。
 控訴審では、避難者側は宇都宮大学国際学部の清水奈名子教授(国際機構論、国際関係論、国際法)の意見書を7月7日付で仙台高裁に提出した。
 清水教授は「移動と居住の自由は、日本国も締約国となっている自由権規約12条に規定された権利であり、さらに原発事故子ども被災者支援法においても、同様の権利の保障が謳われている。また、国内避難民の権利としてこの自らの意思によって避難継続もしくは帰還を決定できるとする国内避難民に関する指導原則が、避難元が避難指示区域内外のいずれかを問わず、原発事故による避難者支援の参考となることを、日本政府は繰り返し認めてきた」としたうえで、次のように述べている。
 「被控訴人等の侵害されている権利の保障を実現することは、避難を継続している他の避難者だけでなく、帰還した人々、または被災地に残って生活している人々への支援継続の必要性を確認し、原発事故被災者全体の人権保護に貢献できること、そしてそのことを多数の被災者が期待していることを強調しておきたい」

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(上)即日結審した仙台高裁に対する弁護団の抗議文
(下)支援者たちは弁論を再開するよう瀬戸口裁判長に求める「はがき作戦」を始めた


【「裁判所は弁論再開を」】
 「暗黒の裁判所のふるまいに対して、ひっくり返す取り組みをやっていかなければいけない」と柳原弁護士。7月26日には「弁論再開申立書」を仙台高裁に提出した。
 申立書は「裁判所が福島原発事故によるすべての避難者と世界の良識が日本の司法に寄せる期待を厳粛に受け止め、前例のない本裁判が目の前の利害関係に忖度・左右されることなく、歴史の審判に耐え得るような正義の裁きを下すために、控訴人は福島原発事故によるすべての避難者の声を代弁する気持ちで、裁判所が勇気を奮って弁論の再開を速やかに決断することを強く求める」などとして、口頭弁論の再開を強く求めている。
 「真の争点形成に向けて積極的に取り組むことが求められるところ、原告は肝心の認否すら行わず、のみならず裁判所もまた、そのような原告の不誠実な態度を寛大にも追認するばかりで、その結果、ひとり被告らのみが積極的な主張をして空回りするだけで、真の争点は何一つ形成されず、充実した『事案の真相解明』が何一つないままの状態で、裁判所は審理終結を強行した。これでは、被告らに主張・立証責任がある抗弁事実について、被告らが主張・立証を尽くそうにも尽くすことが叶わず、本裁判において原告の明渡請求により脅かされている、被告らの生存権・居住権という基本的人権を確保するための不可欠の手段として被告らに憲法で保障された『適正、公平な裁判を受ける権利』が保障されないという看過し難い違法状態に陥っている」
 一方、支援団体は瀬戸口裁判長に抗議の声を届けようと「はがき作戦」を始めた。
 「控訴理由書で求めている避難者追い出しの違法性や不当性の確認、国際人権法における避難者の権利について弁論再開を求めるには、裁判所への多くの市民の声が必要」と支援団体。柳原弁護士も「抗議の声をはがきで表して欲しい。ぜひ投函する前に文面を撮影してSNSにアップして世論を喚起して欲しい」と呼びかけている。
 仙台高裁の住所や記載例はこちら→支援団体のホームページ



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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