fc2ブログ

記事一覧

【原発避難者から住まいを奪うな】「裁判所は国際人権法から逃げるな」裁判長交代で弁論更新 「国際人権法は避けて通れぬ上位規範」~「住まいの権利裁判」第6回口頭弁論

昨年3月、国家公務員宿舎に入居する区域外避難者11人が福島県知事を相手取って起こした損害賠償請求訴訟(住まいの権利裁判)の第4回口頭弁論が2日午後、東京地裁103号法廷(大嶋洋志裁判長から小池あゆみ裁判長に交代)で行われた。裁判長交代に伴い弁論が更新され、避難者側は改めて「日本国憲法あるいは国際人権法に基づく権利に真正面から向き合い、十分な議論を法廷で尽くしていただきたい」と訴えた。避難者側は、国際人権法に関する主張に対する福島県からの反論を待っている。この日は避難当事者の意見陳述も予定されていたが体調不良のため中止。弁護団は次回期日で行うよう求めた。次回期日は12月4日16時。
2023100221232298d.jpg

【「法の穴埋めるのは上位規範」】
 弁論更新にあたり、避難者側弁護団の酒田芳人弁護士が意見陳述。
 「これまで裁判所が熱心に、本件における争点を整理するため具体的な問題意識に基づいて双方に対して説明を求め、また指示を行い、訴訟を適切に進めるために取り組んでこられた」としたうえで、小池裁判長らに対して、この裁判が「日本国憲法あるいは国際人権法に基づく権利をめぐる訴訟である」ことを認識するよう改めて求めた。
 「憲法あるいは国際人権法に関する原告(避難者)らの問題意識について、裁判所がどのように考えておられるのか、はなはだ心許ないと言わざるを得ない」
 「原告(避難者)らがこれまで指摘した憲法あるいは国際人権法に関する議論は、本件に関する結論を出すにあたり極めて重要な論点であると考えている」
 福島県が福島地裁に起こした〝追い出し訴訟〟では、小川理佳裁判長は国際人権法の問題に向き合うことなく避難者側全面敗訴の判決を言い渡している(仙台高裁で係争中)。だから、避難者側は小池裁判長に次のように釘を刺しておく必要があった。
 「ぜひ、真正面からこの問題に関する議論に向き合っていただきたい」
 「十分な議論を法廷で尽くしていただきたい」
 酒田弁護士は言う。
 「憲法や国際人権法を切り口、テコにしてくれないと、明け渡しや未払い使用料を拒否するという理屈は出てこないと思う。そうでないと『もう契約が切れたのだから出て行け』と矮小化されてしまう。『憲法や国際人権法から逃げてもらっては困りますよ』ということは、これからも何回も(裁判所に)言っていかなければいけない」
 原発事故に伴う長期避難を想定した国内法はない。低線量被曝を避ける権利を保障する国内法もない。
 宇都宮大学国際学部教授の清水奈名子さん(国際機構論)は「これを『法の欠缺(けんけつ)』と言います。法制度がないときには、上位規範となる国際人権法や憲法を参照して政府の法的義務を確認する作業が必要となります」と解説する。
 では、国も福島県も司法も「上位規範となる国際人権法や憲法を参照」しているだろうか。

202310032036097f1.jpg

20231003203414eec.jpg

20231002091420848.jpg
避難当事者であり、本裁判の支援者でもある熊本美彌子さんは、事前集会で「これからも『国内避難民には住まいの権利があるんだ』ということを訴えていきたい」とスピーチ。同じく避難当事者であり支援者の村田弘さんは「自ら命を絶った人もいる。住まいを奪われるということはどういうことか。司法のあり方も問う裁判でもある」と語った=東京地裁前


【「上位規範は国際人権法」】
 柳原敏夫弁護士も、法廷で第8準備書面の要旨を説明するなかで「法の欠缺」と「国際人権法」について次のように述べた。
 「日本の法体系は、福島原発事故まで原発事故の救済に関して全面的な「法の欠缺」状態にあった。チェルノブイリ事故を起こしたソ連製の原発とは技術も構造のちがう日本においては、チェルノブイリのような事故は絶対起きないと断言し、原発事故の救済に備える法令も何も制定していなかった。原発事故避難者の救済に対する法令はカラッポ(真空)であった」
 「国や福島県は、原発事故避難者の救済については行政が従うべき法律がカラッポ(真空)で存在しないのだから『法律による行政の原理』に従いようがない、従って、ひとまず外見上は災害救助法等に従って処置したかのような体裁を取りながら、その内実は自分たちの裁量判断でいかようにでも決定できる、と解釈したのである。その結果が、2017年3月末をもって仮設住宅からの追い出しという残忍酷薄な処置であった」
 柳原弁護士は、法の欠缺を補充しない国や福島県の解釈を「根本的な誤り」と批判する。
 「『欠缺の補充』を具体的に行なったとき、本件では法律の上位規範として国際人権法が登場する。社会権規約をはじめとする国際人権法は、原発事故避難者の救済に対する法令が全面的な『法の欠缺』状態にある本件にとって避けて通れない上位規範である。国や福島県が従うべき『法律による行政の原理』の『法律』とは、上位規範である社会権規約をはじめとする国際人権法によって補充されたものであった」
 「法の欠缺」を正しく補充していれば、国や福島県は国際人権法に従い原発事故避難者に対し居住権を保障していたはずだが、実際には区域外避難者を切り捨てた。柳原弁護士は裁判所に改めてこう求めた。
 「『欠缺の補充』には目もくれず、法律が欠缺状態である以上『法律による行政の原理』には従いようがないとして、行政の全面的な裁量判断を肯定し、自分たちの裁量判断で好きなように決定できると考えそれを実行した国や福島県の現実の処置。一体どちらの態度がわが国の憲法秩序、行政法の一般原則に適合しているのか、これこそ本裁判の『はじめの一歩』の核心問題であり、この判断を間違えると本裁判の本論の正しい判断も間違えてしまう。この点を十分留意して頂きたい」
 そのうえで、改めて「議論を深めるために、こちらの国際人権法についての主張に対する福島県の反論をいただきたい」と求めたが、小池裁判長の反応は鈍かった。

202310022133175cc.jpg

20231002212830b3a.jpg
(上)報告集会で「国際人権法を有効に役立てるという裁判例はなかなか増えない。日本の裁判官の国際人権法に対する意識は低いままだ」と指摘した井戸謙一弁護士
(下)柳原敏夫弁護士は法廷で「国や福島県が従うべきは、上位規範である社会権規約をはじめとする国際人権法によって補充された『法律』だ」と意見陳述。「議論を深めるために、国際人権法についての主張に対する福島県の反論をいただきたい」と小池裁判長に求めた


【「被曝受忍政策が根本」】
 弁護団長の井戸謙一弁護士は日本の司法における国際人権法について、閉廷後の報告集会で次のように指摘した。
 「弁護士が国際人権法をようやく使い出したのが1980年代の半ばだと思う。当時、裁判官をしていて非常に衝撃的だった。国際人権法を使えば日本の裁判は変わるんじゃないかと思った。しかし、国際人権法を有効に役立てるという裁判例はなかなか増えない。日本の裁判官の国際人権法に対する意識は低いままだ
 井戸弁護士は「日本にとって大きな課題は選択議定書(自由権規約に付帯する第一選択議定書)の批准だ」と指摘した。
 「選択議定書を批准すれば、最高裁まで行っても人権侵害が是正されなかった場合に国連の人権理事会に救済を申し立てることができるようになる。世界で批准していない国の方が少ない。民主党政権下で批准に向けて動いていたが、政権交代でなくなってしまった。選択議定書が批准されて国連人権理事会が判断するようになると、日本の裁判所が遅れていることが目に見えて分かる。日本の裁判所を変える大きな力になる」
 新任の小池裁判長については「権威的でない」と印象を語った。特に着目したのは傍聴人の拍手を制止しなかった点だという。
 「東京地裁の裁判長が拍手を制止しないのは珍しい。傍聴人が拍手をしたら制止するべきであるという感覚が裁判官の間では色濃くある。そのなかで、拍手をスルーしたというのはそれなりのポリシーを持っているのだろうと思う」
 また、次回口頭弁論が16時開始という点にも言及した。
 「普通の裁判官は嫌がる。仮に17時に閉廷したら、後片付けなどで書記官は残業になる。そうすると裁判官は書記官の組合(全司法労働組合)からの評判が非常に悪くなる。ところが、小池裁判長はそういうことを気にするそぶりは全然なかった」
 新裁判長への期待を口にした井戸弁護士だったが、もちろん期待するだけではない。
 「低線量被曝であっても健康被害はある。だが、国は年20ミリシーベルトで線引きをした。健康被害はないと断言し、年20ミリシーベルト以下の被曝を住民に受忍させようとした。だから避難指示区域外の人は避難する必要はない、すみやかに避難元に戻れ、住宅提供も短期間で打ち切って構わない………。その基本政策の間違いが根本にある。そういう問題であると裁判官に認識させることも、この裁判において非常に大事なことだ」



【住まいの権利裁判】2022年3月11日提訴。国家公務員宿舎から退去できずにいる11人が福島県の内堀雅雄知事を相手取り、住宅提供打ち切りや家賃2倍請求など福島県の施策で精神的苦痛を受けたとして、1人100万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。
 原告は福島県の避難指示区域外から原発避難し、都内や埼玉県内の国家公務員宿舎に入居し退去できないでいる(1世帯は退去済み)11人。
 ①福島県知事が応急仮設住宅としての住宅無償提供を2017年3月31日で打ち切った
 ②福島県が避難先で復興公営住宅を建設しなかった
 ③2019年4月1日以降、福島県が原告らを不法占拠者として扱い、親族訪問などの嫌がらせをした
この3つの違法事由によって精神的苦痛を味わったと主張している。


※関連記事
 【原発避難者から住まいを奪うな】「追い出し、2倍請求は違法」国家公務員宿舎に入居する〝区域外避難者〟11人が福島県を集団提訴~住まいの権利裁判(2022年03月)
http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-630.html

 【原発避難者から住まいを奪うな】〝目には目を〟の内堀県政 知事を訴えた区域外避難者10世帯を逆提訴へ~国家公務員宿舎追い出し問題(2022年06月)
http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-654.html

 【原発避難者から住まいを奪うな】「住まいの権利裁判」始まる 女性原告が意見陳述 大嶋裁判長は「福島県に法律関係などを求釈明する」~東京地裁で第1回口頭弁論(2022年07月)
http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-669.html

 【原発避難者から住まいを奪うな】「住宅無償提供打ち切りの根拠を具体的に示せ」など、裁判長が双方に詳細な求釈明 ~「住まいの権利裁判」第4回口頭弁論(2023年03月)
http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-718.html

 【原発避難者から住まいを奪うな】「福島県は1日も早く〝追い出し訴訟〟取り下げて」清水奈名子教授が仙台で講演 「日本政府の人権侵害を世界が注視している」(2023年08月)
http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-741.html


(了)
スポンサーサイト



プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
https://www.facebook.com/taminokoe/


福島取材への御支援をお願い致します。

・auじぶん銀行 あいいろ支店 普通2460943 鈴木博喜
 (銀行コード0039 支店番号106)

・ゆうちょ銀行 普通 店番098 口座番号0537346

最新記事

最新コメント

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
53位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
25位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
53位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
25位
アクセスランキングを見る>>