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【自主避難者から住まいを奪うな】事実上の再検討・再協議拒否。国「福島県の考え変われば…」、福島県「内堀知事の考えは変わらぬ」~4団体が政府交渉

原発事故による、いわゆる〝自主避難者〟向け住宅の無償提供打ち切り(2017年3月末)が4カ月後に迫った8日午後、4つの団体に所属する全国の避難者が再び東京・永田町の参議院会館に集まり、内閣府や復興庁など省庁の官僚らと打ち切り撤回・無償提供継続を求めて交渉を行った。福島県の担当者も出席したが、国、県ともに発言は今年3月の交渉から変化なし。国が「決めるのは福島県」と主体性を放棄すれば、福島県も「内堀雅雄知事の考えは変わらない」の一点張り。事実上、再検討・再協議を拒否した形だ。寒風吹く中に放り出される避難者を誰が守るのか。打ち切りまで残り4カ月。


【「国が合意した内容に疑義がある」】
 これまで何度も避難者が味わってきた徒労感や怒り、悔しさが再び会議室に広がった。
 東京・永田町の参議院会館。福島みずほ参院議員(社民党)の協力で、内閣府や復興庁、環境省、国交省、原子力規制庁の若手官僚がずらりと顔を揃えた。4団体共同での政府交渉は今年3月9日に続いて8カ月ぶり。この間、避難者たちは国や福島県に対して無償提供の継続を求め続ける一方、受け入れ自治体の議会にも働きかけ、無償提供継続を求める意見書の提出を実現させてきた。今年8月の三県知事会議では、山形県の吉村美栄子知事自ら、福島県の内堀雅雄知事に対して「格段の配慮をお願いしたい」と頭を下げ、無償提供延長を求めた。19万筆を超える署名も国会議員に提出された。デモ、集会…。あらゆる手は打ってきた。しかし、この日も国や福島県が口にする言葉は従来と何ら変わらなかった。
 「災害救助法の実施主体は都道府県知事」
 「独自の支援策を打ち出した福島県を国としても支援していく」
 内閣府の参事官補佐(防災、被災者行政担当)は、まるでロボットのように「何度も繰り返しになり申し訳ありませんが、災害救助法の実施主体は今回は福島県知事でして、国はそれを合意するシステムになっています」と口にして、中手聖一さん(北海道に避難中)ら避難者の怒りを買った。中手さんらが聞きたいのは災害救助法や同法に基づく、みなし仮設住宅運用システムの解説では無い。国が主体的に避難者の住宅問題をとらえ、当事者の声に耳を傾けて、再び福島県と話し合おうとする姿勢だ。
 「国が合意した内容(福島県の住宅無償提供打ち切り、2年間限定の家賃一部補助を中心とした〝支援策〟)に疑義があるのでもう一回協議したいと国が言わないと駄目なんだよ。国の主体的な再検討をお願いしているんです。福島県との再協議です。でも、まともに答えていただけない」
 復興庁に至っては「コメントを差し控えたい。福島県の皆さんをしっかりサポートしていきたい」と他人事のような発言。政府の避難指示が出ていないというだけで、加害者が一方的に決めた区域の外から避難したというだけで、たった5年で住宅が取り上げられる。それがどれだけ避難者を追い詰めるか。霞が関のエリートには全く理解出来ていない。






(上)改めて、自主避難者への住宅無償提供継続を求める要望書が国に提出された
(中)「国が主体的に打ち切りの是非を再検討するべきだ」と怒りを込めて訴えた中手聖一さん
(下)政府交渉には内閣府や復興庁のほか環境省、国交省、原子力規制庁の若手官僚が出席した

【「〝支援策〟は穴だらけ」】
 交渉に参加したのは、「避難の権利」を求める全国避難者の会、原発被害者訴訟原告団全国連絡会、原発事故被害者団体連絡会、避難住宅問題連絡会の4団体に所属している全国の避難者たち。東京近郊の避難者だけでなく、北海道や静岡、京都からも駆け付けた。
 避難者らは①避難指示区域の内外にかかわらず、避難元の地域に帰れない避難者の存在とその正当性を認め、安心して避難を継続できるよう住宅を保障して欲しい②国と福島県だけで協議してきた避難者への住宅無償提供供与終了とそれに代わる「新たな支援策」は避難者の実態にそぐわず、避難者に再び大きな不安と苦難を強いるものとなっている。決して強行しないで欲しい③無償供与を少なくとも当面は継続したうえで、新法制定も含め、汚染地域の被害者・避難者の必要を満たせる住宅保障策を当事者も交えてゼロから再検討して欲しい─とする要望書を国に提出。福島みずほ議員経由で事前に提出していた質問項目に対する回答を求めた。
 しかし何度質しても、内閣府の回答は「仮の話はしたくないが、災害救助法にかかわる内容で福島県から協議の申し出があれば、適切に対応したい」と再協議の余地自体は否定しないものの、国の積極的な関与は拒否。当の福島県生活拠点課幹部も「あくまで『応急救助が必要かどうか』で判断した。政府の避難指示が出ていない地域に関しては除染などで生活環境が整ったということで、来年3月で住宅の無償提供を終了させるという方針に変わりは無い」と繰り返した。つまり、事実上の「再検討・再協議拒否」だった。
 原子力規制庁の担当者が「今年5月に東電から報告を受けた福島第一原発からの放射性物質放出量(2015年度)から計算すると、今でも日々、大気中に1400万ベクレル、海には1万3000ベクレルの放射性物質が放出されていることになる」と説明したように、数値は大きく下がったとはいえ現在も放射性物質の放出は止まっていない。環境省の放射性物質汚染対策担当者は「除染の効果は概ね維持されている。フレコンバッグに入れられた除染土壌は表面線量率で管理しており、仮置き場周辺の空間線量にも問題が無い事をモニタリングで確認している」と〝安全〟を強調したが、土壌汚染は考慮されていない。空間線量にしても面的にとらえるばかりで、点在するホットスポットからは目を逸らしている。今年度中に15万立方メートルのフレコンバッグを中間貯蔵施設に搬入する予定だと言うが、避難指示区域外からフレコンバッグが完全になくなる時期は明示されない。だからこそ、避難の合理性は認められるべきだし、避難生活の根幹である住宅は保障されるべきなのだ。
 「私たち避難者が欲しいものは現状回復です」(北海道に避難中の宍戸俊則さん)
 「どうして『放射線への不安』という重要な要件を抜きにして国は打ち切りに同意したのか」(神奈川県に避難中の村田弘さん)。
 たった5年で原状回復など出来るはずが無い。だからこそ多くの避難者が避難の継続を希望している。しかし、住まいを奪われては路頭に迷ってしまう。住宅が決まらないために、どの小学校に入学するか分からない子どもさえいる。福島県や受け入れ自治体の〝支援策〟には収入要件や世帯要件があり、希望する避難者全員が支援を受けられるものでは無いからだ。
 「福島県の〝支援策〟は穴だらけ。補助を受けられるのはごく一部の避難者にすぎないんだ。支援策からこぼれ落ちる人がたくさんいるのだから考えを改めてくださいと言っているんです」。中手さんが何度も立ち上がって訴えても、官僚は黙って聴くばかりだった。






(上)「仮に福島県知事の考えが変わって再協議を求めて来た場合には適切に対応する」と答えた内閣府の若手官僚
(中)福島県生活拠点課の幹部は「今のところ、内堀知事の考えに変わりはない」と住宅の無償提供継続を〝拒否〟
(下)政府交渉には福島みずほ、山本太郎参議院議員も参加。避難者への住宅無償提供継続を求めた

【「避難者はクレーマーでは無い」】
 交渉には福島みずほ議員や山本太郎参議院議員(自由党)も途中から参加。住宅の無償提供継続を改めて訴えた。
 山本議員は「福島県が人を戻したいという事に国が協力しているという流れですよね」と指摘。「2020年までに復興庁が換算するという事が既に決まっていて、そこから逆算した打ち切り策。福島第一原発が絶賛事故りまくってる、放射性物質を絶賛放出中な福島県にこそ、避難計画が本来は必要なんだ。住民が帰れるかどうかの判断基準は空間線量ではなく土壌汚染だろう」と怒りをぶつけた。千葉県銚子市の県営住宅に住む母子世帯の40代母親が2014年、家賃滞納を理由に千葉県が強制退去を執行する日に無理心中を図って運動会のハチマキで長女を殺害してしまった事件を挙げ「放射能、放射能とうるさいクレーマーだなという想いを心の片隅にも持たないで欲しい」、「必要ならカメラでの撮影を止めるから、再協議に向けて力を貸して欲しい、避難者に寄り添って欲しい」と訴えた。
 これまで同様、高圧的な戸別訪問で避難者が体調を崩した事、打ち切りの結論を出した後に避難者の意向を調査するという本末転倒ぶりも改めて訴えられたが、国も福島県も聞き流すばかり。予定時間を大きく超過した交渉となったが、残念ながら避難者が前向きに考えられるような収穫は得られなかった。福島県生活拠点課の幹部は、進行役の長谷川克己さん(静岡県に避難中)から「住宅の無償提供継続については再考しないという事ですね」と尋ねられると、そこだけは力強く「はい」と答えた。交渉の中身は内堀知事には報告するが知事の考えは変わらない、という言葉は聞き飽きた。避難者から逃げ回っている知事の意思を県職員が代弁し続けるというおかしな構図。
 宇野朗子さん(京都府に避難中)は、悔し涙をこらえながらマイクを握った。
 「たったこれだけの問題をなぜ動かせないのだろう。何でなのだろう」
 そして、自分に言い聞かせるように言った。
 「私たちはあきらめていません。数カ月後に私たちの命にかかわる問題なんです。ぜひ、もう一度ゼロから私たち避難者とともに考えてください」
 福島県中通りは最低気温が氷点下になるなど、今年も厳しい冬が着実に近づいている。しかし、いわゆる〝自主避難者〟には冷たい木枯らしがずっと吹きつけたまま。打ち切りまで残り4カ月。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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