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【12年目の区域外避難者はいま】「〝根拠のない過剰反応〟なんかじゃない!」「法的保護に値することは当然」~あなたは区域外避難者の何を知っていますか?

あなたは「区域外避難者」(いわゆる〝自主避難者〟)の何を知っていますか?「原発事故で放射性物質が降り注いだのだから避難するのは当然」と考えますか?それとも「被曝リスクなどないのに勝手に避難して文句ばかり言っている人たち」だと考えますか?原発事故後、東電からわずかな賠償金しか得られず、唯一のい公的支援策と言っていい住宅無償提供も2017年3月末で打ち切り。挙げ句に〝追い出し訴訟〟を福島県から起こされている区域外避難者。今月6日に結審した「福島原発かながわ訴訟」を通して、区域外避難者の避難の相当性を改めて考えたい。誤解と偏見に満ちた区域外避難者への視線が少しでも変わって欲しい。
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【多額の賠償金など得ていない】
 区域外避難者とは、原発事故後に政府の避難指示が出されなかった地域から被曝リスクを避けるために避難した人々を指す。避難元は主に福島県中通りや会津地方、いわき市などだが、栃木県や茨城県など隣県も含む。「自主避難者」と呼ばれることが多いが、「危なくないのに自己判断で勝手に逃げた」という意味合いが込められることもあるため、最近では「区域外避難者(いわゆる〝自主避難者〟)」という表現を本紙でも使用している。国は区域外避難者数を正確に把握していないばかりか、復興庁が〝所在確認〟をするなかで、帰還意思のない人や所在確認できなかった人などを統計から意図的に除外していた問題も発覚している。
 原発事故後、区域外避難者がどれだけ冷遇されてきたか。
 これまで何度も書いてきたが、避難指示区域からの避難者(いわゆる〝強制避難者〟)と混同されがちなことのひとつに「東電から多額の賠償金を得て裕福な暮らしをしている」という誤解がある。区域外避難者が得られた「支援」は住宅の無償提供くらい。それも福島県の内堀雅雄知事が2017年3月末で一方的に打ち切った。住宅無償提供さえ受けなかった〝自力避難者〟も多いと言われている。
 今月6日に結審した「かながわ訴訟」では、福島県いわき市から避難した女性が「私がこれまで受領した賠償金は、慰謝料もそれ以外の損害もすべて合わせて総額で12万円だけ。夫は20万円、長男は72万円だけ………損害に対して支払われた金額は、家族3人あわせて104万円」と怒りを込めて意見陳述した。
 やはり、いわき市から群馬県に避難した丹治杉江さんは2019年、「群馬訴訟」の控訴審で国からこんな言葉を浴びせられた。
 「自主的避難等対象区域からの避難者について………平成24年1月以降について避難継続の相当性を肯定し、損害の発生を認めることは………低線量被ばくは放射線による健康被害が懸念されるレベルのものではないにもかかわらず、平成24年1月以降の時期において居住に適さない危険な区域であるというに等しく、自主的避難等対象区域に居住する住民の心情を害し、ひいては我が国の国土に対する不当な評価となるものであって、容認できない」
 丹治さんは言う。「12年闘って、得た賠償金は25万円。裁判費用にもなりません」。

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(上)「住宅無償提供を打ち切るな」と福島県知事に直訴したこともあった
(下)「群馬訴訟」控訴審では、国が区域外避難を全否定する書面を提出。避難当事者の激しい怒りを買った


【「科学的裏づけのある行動」】
 「区域外避難者への冷遇」なんてことを言っているのはお前だけだろう―。そんな声も少なくない。
 獨協医科大学の木村真三准教授(国際疫学研究室福島分室室長、二本松市放射線専門家チームアドバイザー)は、著書「『放射能汚染地図』の今」(2014年、講談社)のなかで、次のように綴っている。
 「自主避難した人たちも、避難指示区域から避難した人々とは異なって補償のない中での暮らしを続けていくには大きな苦労や経済的リスクを伴った」
 「もし、国が『避難の権利』という概念を明確に示していれば、状況は大きく違ったはずだ」

 また、フリージャーナリストの烏賀陽弘道氏も、著書「原発難民 放射能雲の下で何が起きたのか」(2012年、PHP新書)で「交通費も宿泊代も全部自腹だ。避難先も指定されない」と指摘している。
 「ある日突然、自主避難という境遇に追い込まれると、結局、勤務先や貯金、財産の差が出る」
 「災害避難において、困難か快適かの差は、結局、経済力=お金の差だった」

 そして司法も、その差を埋めようとはしていない。
 だから「かながわ訴訟」控訴審の最終弁論で、避難者側代理人の1人である小賀坂徹弁護士は、次のように強調したのだ。
 「年間20ミリシーベルトの避難指示基準は放射線被曝の健康影響の有無を画するものでなく、避難者数抑制のための政治的・政策的基準に過ぎない」
 「避難指示区域の内外における賠償格差はまさに断崖絶壁。区域外避難者にとっては同じ事故被害の賠償とは到底いえない低水準
 「本件事故の被害の本質は、放射線被曝による被害。それを避けるために長期間の避難を強いられたことの損害。放射線の健康影響を中核として理解されなければならない。放射線被曝による健康影響を正しく捉えられていない」
 「子どもを抱えた多くの区域外原告らは、自分のこと以上に子どもに対する健康影響を考慮し、避難を決断した。被曝のリスクを抱えた場所に子どもたちを留めておくことができるのか、親として子どものために何ができるのか、何をなすべきなのか。区域外の原告は、こうした厳しい葛藤に晒された上で文字通り苦渋の決断として避難を強いられた。十分な科学的裏づけのある行動であり、法的保護に値することは当然
 「国や東電が、区域外原告の避難が根拠のない過剰反応であって法的救済の対象外と未だに主張していることは、法的にも倫理的にも到底許されるものでない」

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「福島原発かながわ訴訟」代理人の1人、小賀坂徹弁護士。一貫して低線量被曝の問題に取り組み、冷遇される区域外避難者の避難の相当性を訴え続けた


【「ずっと原発事故が続いている」】
 今月6日、結審後の報告集会で、小賀坂弁護士は次のように強調した。
 「今年に入って、放射線被曝のことで弁論に立ったのは、横浜地裁で行われている第二陣の口頭弁論を含めて5回目。それくらい言い続けてきた。『かながわ訴訟』の役割は、損害額の底上げ。特に区域外避難者の賠償額をどう引き上げるか。これだけ苦しい想いをしているにもかかわらず、10万円とか20万円とか…。これがこの事故の損害賠償なのかというほどの水準にずっと置かれてしまっている。どの集団訴訟の判決も、区域外避難者に対する賠償金を正当な金額にまで大幅に引き上げた判断はない。それを引き上げるために、放射線による健康被害が年20ミリシーベルトの内側と外側で変わるのかということを、口を酸っぱくして言い続けなければいけなかったし、言い続けてきた」
 「広島・長崎での最新の疫学調査での到達点をできる限り正確に裁判所に理解してもらおうということを述べた。もう結論は出ている。つまり、疫学的な有意差は確認できていないということをもって国や東電は『科学的に証明されていない』と言うが、そうであったとしても、疫学研究の蓄積によって『しきい値はない』ということをはっきりと結論づけているのがLSS14報。それが2012年。ワーキンググループの報告は2011年12月だから、その後に最新の疫学研究が『しきい値はない』と断言している。だとすれば、多くの区域外避難者の人たちが避難したことが〝単なる過剰反応〟〝漠然とした不安〟ではなくて、科学的な裏付けが十分にある行動だったということが事故後の研究成果によって裏付けられている。子どもを守ろうとしたみなさんの行動は科学的にも正しかったということが後から裏付けられたんだということを十分に裁判所に理解してもらいたかった」
 被害の実相に見合った賠償で、原発事故被害者はようやく、原発事故を終わらせるためのスタートラインに立てるという。
 「ともすると、もう12年経って過去の事故だと思われがちだし、政治の動きはまさに過去のものとして葬り去ってしまっている。当事者にとっては何も終わっていない。ずっと原発事故が続いている。それを終わらせるためには、責任をきちんと明確にすることときちんと賠償させること。これで終わるのではなくて、これでやっと〝終わるためのスタートライン〟にやっと立てるんだ。そのことも裁判所に理解して欲しかった。みなさんは、全然終わらない状況のなかでもがき苦しんでいる。終わらせるために裁判所や弁護士は役割を果たさなければいけない」



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(了)
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