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【151カ月目の浪江町はいま】帰還困難区域町民が吐露した想い「除染など本当にできるの?」「土地は国が買い上げて欲しい」~都内で町政懇談会

「帰還困難区域の除染など本当にできるのか?」「土地は国が借り上げるか買い取って欲しい」―。14日午後に都内で行われた浪江町主催の「町政懇談会」最終日。浪江町小丸地区から神奈川県内に避難した女性がマイクを握ったが、町側は「全面除染を国に求める」の一点張り。改めて原発事故被害からの〝復興〟の難しさが浮き彫りになった。自宅のある小丸地区は、いまも空間線量率が毎時5マイクロシーベルトを上回る。女性は「言ってもしょうがないかもしれないけど、やっぱりちゃんと言わないとね」と話した。この日は福島県内外7カ所で行われた町政懇談会の最終日だったが、参加した町民はわずか8人だった。
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【「毎時5マイクロシーベルト超」】
 「小丸地区は現在でも毎時5マイクロシーベルト以上あります。放射線量が非常に高い地域です。『一般社団法人原発事故被災動物と環境研究会』(代表理事・伊藤伸彦元北里大学副学長)が牛の放牧を続けています。今年1月に帰還困難区域の帰還意思に関する意向調査がありました。小丸地区の土地は国が借り上げるか買い上げるかをするよう、意向調査の自由意見欄に書きました。いまだ帰還困難区域である小丸地区の土地について、町はどのように考えていますか」
 女性は静かな口調で質問をした。12年前に起きた未曾有の原発事故で住み慣れた土地を奪われた。自己都合で神奈川県内に転居したのではない。原発事故がなければ、いまも小丸地区のわが家で生活をしている。しかし、12年が経っても奪われた日常生活は戻らない。いったいいつになったら元の浪江町になるのかも見通せない。「もう、いい加減に国が買い上げてくれ」。女性の言葉には、そんな想いが凝縮されていた。
 しかし、町の回答は改めて女性を失望させるものだった。昨年4月1日付で就任したばかりの成井祥(なるい・あきら)副町長(福島県からの出向)が次のように答えた。
 「確かに、ご指摘の通りモニタリングポストの線量も高いということで、われわれも受け止めています。いま国の方では、2020年代をかけて帰還困難区域の方々で戻りたいという方々が戻れるような形で新たな枠組みをつくりました。それが『特定帰還居住区域』という制度です。それに基づいて今後、町の方でどういったエリアの避難指示を解除していくかの計画をつくって国に申請し、国に認定を頂くという流れ。年内に国に申請し、年度内には国の認定をいただくということで考えています」
 「町と致しましては、まずは1日も早く戻れるように取り組んでいくというのが最大限やるべきことと考えています。国の方に生活環境の改善、まずはしっかりと除染をして帰れる環境にしていくということをしっかりとやっていきたい。9月27日にも復興大臣に要望しましたが、町と致しましては、すべてのエリアの除染・すべてのエリアの避難指示解除を引き続き目指していくことに変わりはございません。国による買い上げについてご意見をいただいておりますが、現実的には、町と致しましては、すべて除染をし、すべての皆さんが戻れる環境を整えていただくよう国に申し上げています」

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(上)小丸地区から避難している女性は「全面除染などできるのか」、「土地を国に買い上げてもらいたい」と想いをぶつけた=TKP東京駅カンファレンスセンター
(中)小丸地区を含め、浪江町は放射能汚染で町の8割が帰還困難区域に指定されている
(下)女性が指摘した通り、小丸地区は今なお毎時5マイクロシーベルト以上の汚染が続いている


【「あれだけの高線量地域」】
 まるで国の役人が話しているような回答だった。これで女性が納得するはずもない。再びマイクを握った。
 「国に全面的な除染を要望していくという話だが、小丸地区のようなあれだけの高線量地域を完全に全部除染できるのか現実的に可能なのか、みなさん感じていると思います。放射線量があれだけ高い地域なので…」
 成井副町長が答えた。
 「一般社団法人が一時的に土地を借り上げて牛のデータ収集などをしていると思うが、それと国の買い上げ(借り上げ)は切り離して考える方が良いと思う」
 そのうえで、先ほどの答えをくり返した。
 「戻りたい方がいらっしゃいますから、まずは環境をしっかりと整えていく。ご指摘のように非常に放射線量も高いし広範囲に及ぶということもありますので、われわれも厳しい環境であると思っています。まずはしっかり除染をして、帰りたいという想いに応えていくというのがまずはやるべき対応だと考えています。除染を進めるなかでは当然、放射線防護に関する専門的な知見を有する方々にしっかりと助言をいただきながら、『除染検証委員会』にしっかりとかけながら、『これであれば生活環境は整っているよ』というご意見をいただかないと解除に至らないという厳しい道のりが待っていると思う。それに向かって国ともしっかり協議・連携しながら取り組んでいきたい」
 女性は「小丸地区の住民のうち、果たして何人が帰りたいと考えているのか」とも質問したが、町側は「行政区単位での公表はしていない」と回答を拒んだ。
 「行政区ごとに公表してしまうと個人情報などの問題もある。全体での数を公表しているので、ご理解いただきたい。全体で言いますと対象となっている757世帯のうち、帰還を希望しているのが231世帯。約30・5%となっております」
 閉会後、女性は言った。
 「除染なんかできないと思いますよ。津島だってそうじゃないですか」

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(上)町は居住人口が2106人に増えたと強調するが、このうち震災発生時の町民は1386人。帰還率は6・4%にとどまっているのが現実だ
(中)吉田栄光町長は「ふるさと浪江町 #大きく前に進み始めた」、「今年3月に『再生拠点』が3地域で解除され、年内には『特定帰還居住区域』の計画を国に提出したいと語ったが………
(下)小丸地区の扱いについて、福島県から出向中の成井副町長は「すべて除染をし、すべての皆さんが戻れる環境を整えていただくよう国に申し上げている」とくり返した


【住民票大量流出も想定】
 町がつくった配付資料(A4判で50ページ)には、〝前向き〟な情報ばかりが盛り込まれていた。
 「なみえ創成小・中学校」には現在、合計64人の子どもたちが在籍していて開校時の10人と比べて6枚に増えたこと(制服や運動着は支給され、修学旅行費や給食費も実費分が支給される)。「なみえにじいろこども園」にも48人の園児が在籍していること。
 請戸地区に2年後、パークゴルフ場などがオープンすること。町内5カ所の産業団地には企業が続々と進出していること。町内での営農再開率が20%を超えたこと。2年後の再開に向けて鮭のやな場を整備していること。
 2026年度を目標に浪江駅周辺の再開発を進めていること(駅にもようやくエレベーターが設置される予定)。「福島国際研究教育機構」(F-REI)によって2029年度には500人規模の研究者が町で活動すること………。
 吉田栄光町長も冒頭のあいさつで「浪江駅周辺を核にした新たな街づくりを進めてまいります」、「F-REIには世界をリードするような研究者がおいでいただく。どうぞご期待をいただければと思います」などと述べた。
 他方、配付資料には町内各地の空間線量に関する記述はなく、帰還困難区域の具体的な記述もなし。町側が「『NAMIE WATER~なみえの水~』が、国際的な品質評価機関モンドセレクションで3年連続金賞を受賞しました」とアピールしているのに対し、男性町民から「素人考えでは、原発事故による放射性物質の危険があるにもかかわらずモンドセレクションで金賞を受賞している。取水場所はどこなのか」との質問が出た。
 これに対し、町側は「製造を委託している業者(株式会社秩父源流水)が小野田地区の地下にある浅井戸からポンプで取水し、タンクローリーで会社に運んでペットボトルのミネラルウォーターを製造している」と回答。町のホームページには「町が取水場で毎日行う放射性物質に関する検査では『測定限界値未満』の〝安全な水〟ということが確認されています」と記されている。
 町民からは「国の特例措置が終わったら、住民票が一斉に避難先自治体に流出するのではないか」との指摘もあった。町側は「状況を注視する」と応えるにとどまったが、吉田町長は最後にこう発言している。
 「われわれは浪江町としてしっかり行政が自立するのが大きな目標。ただ、かつてない震災・原発事故で町民がゼロになり、いままで例のないさまざま大変な状況にある。国の特例措置が終わり住民票が流出してしまったら、浪江町には住民税が入らなくなる。そういう方が大勢出ることも想定しながら考えているところだ」
 「辻辻でさまざまな課題があります。最終的には、浪江町や双葉郡の行政としてのありようについては間違いなく国や福島県、住民の方々と協議しながら行政として方向を出していく場面になっていくと思っている」
 閉会後、吉田町長に「将来の町村合併を視野に入れた発言なのか」と確認したが、町長は「まったく違う。考えすぎだよ」と苦笑交じりに否定した。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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