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【女川原発運転差止請求訴訟】再稼働阻止へ大きな転機 控訴審初日に瀬戸口裁判長が「避難計画の実効性に踏み込む」と表明 「希望出てきた」と石巻で集会

東北電力が2024年初夏に計画している女川原子力発電所2号機(宮城県女川町、石巻市)再稼働に反対し、宮城県や石巻市の広域避難計画には実効性がないとして石巻市民17人が起こした「女川原発運転差止請求訴訟」が大きな転機を迎えている。仙台高裁での進行協議の席上、瀬戸口壯夫裁判長が「避難計画の実効性に踏み込んで審理する」と表明したからだ。一審・仙台地裁(齊藤充洋裁判長)は実効性の有無に踏み込まず「過酷事故が発生する具体的な危険があることについての主張立証がない」と門前払いしていただけに、勝訴判決への住民たちの期待が高まる。11日に石巻市内で開かれた集会をオンライン取材した。
女川第1回口頭弁論 20211109081534c06

【「次回期日で結審を」】
 集会では、弁護団長の小野寺伸一弁護士が5月に一審判決が言い渡されてから後の経過を説明した。
 「一審判決は『避難計画の実効性については判断しない』ということを言いました。避難計画の実効性が問題となるのは、放射性物質が放出されるような大事故起きた場合だと。だから、女川原発で『大事故が起きる』ということを住民側で立証しなさいと。立証がない限りは避難計画の実効性に踏み込むことはしないということでした」
 そもそも、過酷事故が発生する具体的な危険性について、住民たちが立証することなど可能だろうか。小野寺弁護士は、客船と救命ボートの関係に例えた。
 「避難計画は、客船における救命ボートのようなもの。仮に乗客が救命ボートの欠陥を知り、それを船長に伝えたとしましょう。そうしたら、船長が『救命ボートを必要とするのは海難事故が起きた場合だ。いつ、どこで、どのような海難事故が起きるのかをはっきりさせろ』と乗客に言い返しました。それをしない限りは救命ボートの欠陥について取り上げないよと。仙台地裁が言っていることはそういうことです」
 「そう考えれば、一審判決のおかしさが分かるのではないでしょうか。いつ、どこで、どのような事故が発生するかなんて分からないからこそ、万が一のために救命ボートを備えておくのです。つまり、いつ、どのような過酷事故が女川原発で発生するかなど誰にも分からないからこそ、稼働させるのであれば万全な避難計画が必要となるのです」
 ちなみに、水戸地裁は2021年3月に言い渡した「東海第二原子力発電所運転差止等請求訴訟」の判決で、避難計画の不備だけを理由に日本原子力発電株式会社に対して東海第二原子力発電所の原子炉を運転しないよう命じている(住民勝訴)。
 「そもそも、福島第一原発事故のシナリオを事前に予見した人がいましたか?」という小野寺弁護士の問いに、東北電力は何と答えるだろうか。
 一審判決から5カ月。仙台高裁の瀬戸口裁判長は一転して、避難計画の実効性に踏み込むことを表明した。
 「いきなり判決に等しいような裁判所の見解が出てきたので驚きました。私たちとしては、したやったり。いよいよ、われわれが一番言いたいところに裁判所が焦点を当ててくれたのですから」
 小野寺弁護士は、瀬戸口裁判長が異動する前に結審・判決に持ち込みたいと考えている。
 「できれば次回期日で結審させたい。裁判長が交代するとガラリと変わってしまうこともあり得るので、何とか4月の異動時期までに結審に持ち込みたい」

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①「『ストップ!女川原発再稼働』意見広告の会」がクラウドファンディングで募ったお金を活用した〝紙面デモ〟の意見広告。10月1日付の地元紙・河北新報に掲載された
②③住民たちが避難計画実効性の無さを主張する主な根拠は2つ。スクリーニング場を開設できないこと、住民を運ぶバスを確保できないこと―だ。
④住民側は11月2日付で3つの書面を提出。1月31日に予定されている次回期日での結審を望んでいる
⑤仙台高裁の瀬戸口裁判長は避難計画の実効性を審理するため、改めて住民(控訴人)と東北電力(被控訴人)双方に書面の提出を求めた


【「司法は明確な判断示せ」】
 10月2日、仙台高裁で開かれた第1回口頭弁論では、原告団事務局長を務める日野正美さんが意見陳述。「避難計画の実効性について裁判所は明確な判断を示すべき」と訴えた。
 日野さんの自宅は、女川原発から約20キロメートルの距離。福島第一原発に当てはめると南相馬市や葛尾村、川内村、楢葉町が含まれる範囲に相当する。
 「東日本大震災の地震、津波と福島第一原発事故を経験し、石巻地域の復興活動と共に、石巻地域の方々と福島第一原発事故に由来する放射性汚染廃棄物の焼却処分に反対する活動も行ってきました。 この活動を通して命、健康、 生活、環境を破壊する放射性汚染廃棄物の実態から、女川原発で事故が起きれば取り返しのつかない事態になることを改めて感じました。そして『女川原発の避難計画を考える会』に参加して調査検証した中で、避難計画に実効性のないことが確認でき、このことを争点とした女川原発再稼働差止を求める訴訟を提起しました」
 2020年8月、宮城県主催の住民説明会で、住民から「女川原発は放射性物質が漏れを起こすような事故は絶対に起こらない、と言えますか?」と質問され、東北電力の担当者は「絶対ないとは言えな い」と答えたという。
 「原発を有する自治体に避難計画の策定が法律で義務づけられているのは『大事故の発生は否定できない』からであり、このことは公知の事実です」
 住民たちは一貫して避難計画の杜撰さを訴えてきた。もちろん感情論ではなく、自ら実際に車を走らせるなどして徹底的に調べた。
 「退域時検査場所の一つである『鷹来の森運動公園』には、石巻市民だけで6万7469人が押し寄せ、他の市町も入れると9万人強の住民が押し寄せることになっています。一審判決後の6月2日、 東松島市と同市議会は宮城県に対して『鷹来の森運動公園』へ通じる県道や出入口の二車線化などの拡張を要望しました。 しかし、二車線化が実現したとしても出入口が一箇所しかないのであれ ば、やはり渋滞解消は期待できません。 渋滞に巻き込まれれば何日もの間、車の中で拘束されます。放射性物質にさらされる危険性だけではな く、高齢者や要支援者の体調の悪化が予想されます」
 だからこそ、司法には避難計画の実効性について真正面から審理して欲しいのだ。
 日野さんは言う。
 「これまで避難計画の実効性について、行政や女川地域原子力防災協議会でも審査されてきませんでした。司法も審査しないとなれば、誰も実効性について審査しないことになります。裁判所は住民の人格権侵害を防止する『人権の砦』です。住民の不安を解消するためにも、 避難計画の実効性について裁判所は明確な判断を示すべきです」

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①②リモート参加した甫守一樹弁護士は、第1回口頭弁論で行った意見陳述を再現。改めて「水戸地裁の判断枠組みをこの裁判でも採用するべきだ」と語った
③④⑤原告団事務局長の日野正美さんは、法廷で「避難計画の実効性について裁判所は明確な判断を示すべき」と意見陳述した


【「がんばり、無駄でなかった」】
 原告団長の原伸雄さんは81歳。
 「仙台高裁の瀬戸口裁判長が進行協議で『避難計画実効性の有無を審理する』と表明しました。まったく新しい局面を迎えての今日の集会です。判決がどうなるかは分かりませんが、ここまでこぎ着けられたのは、これまでのがんばりが無駄ではなかったという意味で感慨深いです。岸田政権が〝原発回帰政策〟をしゃにむに進めているなかでの裁判。意義は非常に大きいです。来年5月に延期されましたが、女川原発2号機の再稼働を許さないという世論を高めていきたいを考えています」
 原告の1人、阿部美紀子さんは3期12年にわたって町議を務めた。12日で任期を終えた。86歳で亡くなった父・宗悦さんは、80年代の「女川原発運転差止訴訟」原告団代表だった。
 「考えてみてください。避難計画をつくらなければならないという時点で、原発がいかに危険なものであるか。数年前、宮城交通のバスドライバーさんたちとと話したことがあります。東日本大震災当時、事務所に駆けつけようと思っても道路が寸断されたり渋滞したりして思うようにならなかったと言っていました。原発事故が起きた後にバスを確保することなど難しいのです。まったくできないような避難計画だと思います」
 阿部さんが目指すのは原発のない社会。
 「最近、原発が『地球温暖化対策の優等生』だと言われます。しかし、原発から出される温排水は、海水温を1℃上げるどころか海水より7℃も高いのです。優等生などとは言えません。再稼働はもちろん、すべての原発廃炉にもっていきたいと考えています」
 仙台高裁は、「避難計画の実効性」という重い重い扉をようやく開けようとしている。仙台地裁は扉の前にすら立たなかった。
 筆者は「瀬戸口裁判長が避難計画の実効性に踏み込むことを表明したことで、勝訴に近づいたと考えて良いのか」と質問した。
 小野寺弁護士が次のように答えた。
 「希望が出てきたという感じ。ある意味、出発点に立ったということなんだろうと思う。油断はできない。裁判所が裁判長を交代させる可能性はあると思う。その意味でも、現在の裁判体でなんとか結審させたい。瀬戸口さんにやめてもらっちゃ困る。敗訴の危険はなくなったわけではない。希望は出てきたが油断してはまずい。東北電力も安全対策に4000億円ものお金をかけているのですから、必死だと思う。われわれも持てる力を最大限に発揮しなければならない」
 第2回口頭弁論は2024年1月31日14時に開かれる。



 ※関連記事は、こちらをクリックすると読めます


(了)
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