fc2ブログ

記事一覧

【原発避難者から住まいを奪うな】国、都担当者の人証申請を事実上却下する「留保」 次回〝ガス抜き本人尋問〟のみ実施~鴨下さん追い出し訴訟、東京地裁で第9回口頭弁論

福島県いわき市から原発避難し、都内の国家公務員宿舎に入居した鴨下祐也さん(「福島原発被害東京訴訟」原告団長)に対する〝追い出し訴訟〟の第9回口頭弁論が11月29日、東京地裁615号法廷(金澤秀樹裁判長)で行われた。鴨下さん側は復興庁や関東財務局東京財務事務所、東京都の担当者、鴨下さん本人に対する尋問を申請したが、金澤裁判長は「必要ない」として3人の尋問を事実上不採択(留保)。鴨下さんに対する本人尋問のみ採用し、次回期日(1月31日13時半)に行うことを決めた。金澤裁判長は原発事故の伴う被曝リスクや国際社会からの指摘などをすべて無視して形式的に判断。判決を言い渡す意向を示したことになる。
住まいを奪うな

【4人への尋問を申請したが…】
 鴨下さん側が10月6日付で証人尋問を申請したのは①復興庁被災者支援班の2017年3月当時の責任者、②関東財務局東京財務事務所の2021年当時の所長、③東京都住宅政策本部都営住宅経営部の2017年当時と現在の特命担当課長、④鴨下さん本人―の4人。
 復興庁被災者支援班責任者への尋問は、国が国際人権A規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)の11条や12条を考慮することな く、2017年3月末で住宅無償提供を打ち切った経過などを明らかにするのが目的。
 関東財務局東京財務事務所長への尋問では、請求している「損害金」の額が妥当なのか。そもそも原告(東京都)の被告(鴨下さん)に対する請求には理由がないことなどを明らかにする。
 財務省関東財務局東京財務事務所と東京都住宅政策本部が交わした「確認書」で国は、国家公務員宿舎の使用許可を与えたうえで、使用許可期間を過ぎても明け渡さない場合には「(東京都は国に)損害額に相当する金額を損害賠償として支払わなくてはならない」と定めている。しかし、この文書の存在は鴨下さんには知らされなかった。
 東京都住宅政策本部都営住宅経営部特命担当課長への尋問では、東京都が負担した「使用料相当損害金」は鴨下さん個人ではなく、被災県である福島県に対して求償すべきものであることを立証することが目的だった。
 「本件建物の一時使用許可をめぐって生じた損害等の費用は災害救助事業に係る経費であり、地方財政法10条の3第1号の『災害救助事業に要する経費』に該当するものである」(証拠申出書より)
 代理人の1人である平松真二郎弁護士は、前回期日の報告集会で「東京都は鴨下さんに280万円ほどを請求していますが、都の担当者に法廷に出てきてもらって、この金額の根拠や『確認書』を国と交わした経緯を明らかにしなければ判決も書けないのではないかということです。少なくとも都の担当者には、どうしてこんな裁判が起こされたのかを説明してもらわなければいけません」と語っていた。
 鴨下さんの本人尋問については「国内避難民に該当する人から国や東京都が住宅を取り上げ、裁判まで起こした明け渡しを求めることがいかに非道なことなのか。東京都のやり方がいかに間違っているかを法廷で話してもらいたいと考えています」(平松弁護士)

202312021114378cb.jpg

202312021114458e6.jpg
(上)今回も東京地裁前でスピーチした鴨下さん。「原発事故の最大の被害は低線量被曝。いわき市に戻れば被曝を強いられる。それなのに住宅無償提供が打ち切られた。安全な被曝などない。健康被害を避けるために避難住宅に残らざるを得なかった」と訴えた
(下)平松弁護士(左)は鴨下さんの本人尋問だけが認められたことについて「話を聴かずに敗訴判決を言い渡すと、控訴審で『審議不十分』と訴えられる可能性がある。そういうハレーションを事前に防ぐ狙いもあるのだろう」と分析した


【「事実関係大きな争いない」】
 だが、金澤裁判長は鴨下さん以外の3人への尋問をあっさりと否定した。
 「裁判所として、被告本人を除いた3名の方については、現段階では尋問の必要がないと考えています。本件においては、権利濫用が問題となっているところです。具体的な事実関係としては大きな争いはないところだと理解していますが、国や東京都の取り扱いが、被告側はこれまでご主張になられている条約も含めた法令との関係で適切なものであったかどうか。明け渡しは終わっているが、賃料相当損害金を請求することが権利濫用になるかどうかが争点になると理解しています。そうすると、法令の解釈が重要な問題になるだろうと考えていますので、事実関係を確認するために3名の方の尋問をする必要はないと考えています」
 そして、こう続けた。
 「被告本人については、原告のご意見も『しかるべく』というところですので、採用したいと考えております。ほかの方については『留保』としておくつもりでおります。ご本人の尋問が終わったら………」
 ここで平松弁護士が手を挙げた。
 「こちらが重要視しているのは、放射能による被害を恐れて避難を続けている状態について『国内避難民』に該当すると。国や東京都などの庇護が必要だということを考慮したうえで対応しているのかということが問われていると考えている。いま『留保』とおっしゃいましたので、まずは被告(鴨下さん)の話を聴いていただいたうえで、やはり尋問を採用していただきたい。改めて尋問の必要性については主張したいと考えております」
 一応、留保としたが、事実上の「不採用」。その代わり鴨下さんの本人尋問はやってやろう、というのが裁判所の結論だった。
 鴨下さんに対する尋問(主尋問30分、反対尋問20分)は、次回1月31日の期日で行われることが決まった。
 なお、原告(東京都)側は、鴨下さん以外の尋問について「本件訴訟の争点は権利濫用等の専ら法律論であることから、証人尋問を行って事実関係を確定することにより何か明らかにするような性質のものではなく、証人尋問を行う必要性に乏しい。加え、本件訴訟においては、甲号証だけでも50を超える客観証拠が提出されているのであるから、事実関係の確定には本件訴訟に提出された客観証拠を吟味することで十分に足りる」として「採用されるべきではない」との意見を提出していたが、金澤裁判長は「原告とは違う理由で留保」と説明した。弁論は7分余で終了した。

20231202163940ee1.jpg

20231202163952420.jpg

20231202164012b42.jpg
金澤裁判長は、鴨下さん以外の尋問を事実上の不採用。住宅無償提供打ち切りの経緯など、原発避難者の住宅問題に横たわる問題には手をつけないまま判決を言い渡す意思を示した


【「同じ権利を有する国内避難民」】
 国内避難民に関する国連特別報告者として昨秋、訪日調査を行ったセシリア・ヒメネス=ダマリーさんは、「ヒューライツ大阪」への寄稿文で改めて次のように指摘している(全文は→こちらをクリック)。
 【福島県からの避難者は、その理由が避難指示であるのか、あるいは原発事故の影響に対する恐怖によるものなのかを問わず、すべて同じ権利を有する国内避難民である。すべての国内避難民はどのような恒久的解決策を求めるかについて十分な情報に得た上で、かつ自らの意思によって決定できる権利を有しており、この権利は移動と居住の自由に対する権利に由来する】
 【避難者は別の場所での永住という選択をもって差別されるべきでなく、「自主避難」か「強制避難」かに関わらず、定住できるように平等な支援と補償を受けるべきである】
 【福島原発事故によって国内避難を余儀なくされたすべての人々に対して、特に今も避難生活を余儀なくされている人々に対して、保護、人道支援、および恒久的な解決策について人権に基づいたアプローチを確実に実施するよう日本政府に要請する】
 【すべての行政的および法的施策とその実施において、いわゆる「強制避難者」と「自主避難者」との間における差別的区分を完全に取り除くことを強く勧告する】
 しかし、国も福島県も強制避難者と区域外避難者(いわゆる〝自主避難者〟)を明確に区別。区域外避難者への住宅無償提供を2017年3月末で打ち切った。国家公務員宿舎から退去できずにいる区域外避難者に対し〝懲罰措置〟として2倍の家賃を請求しつづけたほか、福島県内に暮らす親族宅を福島県職員が住所などを調べ上げて訪問。「法的措置」をちらつかせながら「退去に向けたご協力」を求めた。そして現在、建物の明け渡しを求めて福島県が提訴した複数の〝追い出し訴訟〟が係争中。ダマリーさんが求める状況とはかけ離れている。
 なお、鴨下さんは今年1月27日、東京都に対し明け渡しの届け出を提出。現在は退去しているため、東京都は明け渡し請求は取り下げた。そのため、区域外避難者への住宅無償提供が打ち切られた後の2017年4月1日から2023年1月27日までに発生したと都が主張している「損害金」の支払いが本件裁判の争点となっている。



(了)
スポンサーサイト



プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
https://www.facebook.com/taminokoe/


福島取材への御支援をお願い致します。

・auじぶん銀行 あいいろ支店 普通2460943 鈴木博喜
 (銀行コード0039 支店番号106)

・ゆうちょ銀行 普通 店番098 口座番号0537346

最新記事

最新コメント

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
53位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
25位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
53位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
25位
アクセスランキングを見る>>