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【原発避難者から住まいを奪うな】「原告らに国内避難民としての権利ない」「原告らの主張は独自の解釈」福島県が国際人権法を全否定~「住まいの権利裁判」第7回口頭弁論

昨年3月、国家公務員宿舎に入居する区域外避難者11人が福島県知事を相手取って起こした損害賠償請求訴訟(住まいの権利裁判)の第4回口頭弁論が2日午後、東京地裁103号法廷(小池あゆみ裁判長)で行われた。被告(福島県)が提出した第7準備書面は、「原告らに国内避難民としての『居住権』なる権利が保障されているものではない」、「原告らの主張は独自の解釈」などと原告(避難者)側の主張を一蹴。驚くべき人権意識の低さだ、と避難者側弁護団を呆れさせた。この日は避難当事者の意見陳述も予定されていたが中止。弁護団は次回期日で行いたい意向を持っている。次回期日は2024年3月18日14時。
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【「居住権、保障されていない」】
 「驚くべき人権意識の低さだ。本当にびっくり」
 避難者側代理人の1人、古川健三弁護士は閉廷後の報告集会で語った。
 予想されたとはいえ、福島県が提出した反論は原発事故に伴う被曝リスクや避難の長期化、国際人権法を全て無視した酷い内容だった。
 特に顕著だったのが国際人権法に対する見解。福島県は、避難者側の主張を一貫して「独自の解釈」と一蹴した。
 「原告らの主張は独自の解釈であって、 そのような独自の解釈を前提として違法性を論ずべき理由はない」
 「原告らに国内避難民としての『居住権』なる権利が保障されているものではないことはすでに述べたとおり」
 「社会権規約は、個人に対して即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではなく、同規約11条1項の規定も、締約国が同項所定の権利の実現に向けて積極的に社会政策を推進すべき政治的責任を負うことを述べるにすぎない」
 「社会権規約委員会の一般的意見や国連人権委員会作成の『国内避難民の指導原則』等が法的拘束力を持つものでもない」
 「原告らの主張は独自の解釈であって、そのような独自の解釈を前提として違法性を論ずべき理由はない」

 国内避難民に関する国連特別報告者として昨秋、訪日調査を行ったセシリア・ヒメネス=ダマリーさんは【「自主避難」か「強制避難」かに関わらず、定住できるように平等な支援と補償を受けるべきである】と指摘したうえで、【すべての行政的および法的施策とその実施において、いわゆる「強制避難者」と「自主避難者」との間における差別的区分を完全に取り除くこと】を日本政府に勧告している。
 しかし、福島県は意に介さない。
 「応急仮設住宅の供与期間の延長について、区域外避難者 (自主避難者)と区域内避難者との扱いに差異を設けること自体が不合理であるとは到底いえない
 「区域外避難者に対する応急仮設住宅の供与を2017年3月末から延長しないとした決定は、何ら平等原則 (憲法14条)に違反するものではない」

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福島県が提出した第7準備書面の一部。原発事故に伴う国内避難民の居住権も社会権規約に基づく庇護も全力で否定。「原告らの主張は独自の解釈」と一蹴している


【「支援法は義務課してない」】
 福島県職員による「無許可親族訪問」についても、県側は同様の姿勢だ。
 避難者側は「親族に対して被告との紛争事実を秘していたにもかかわらず、書面で一方的に明らかにされた。それだけでなく親族宅にまで押しかけ、口頭で原告らに法律違反があるとして転居と家賃などの支払い協力を求めた。重大な侮辱であり、 親族とのトラブルを発生させる可能性のある重大なプライバシーの侵害行為だ」と主張するが、福島県は次のように反論している。
 「原告ら親族に、原告らが東雲住宅から退去していないことや家賃・損害金が未納になっていることを伝え、転居に向けた協力や金銭援助の協力ができるか確認したことは被告職員の業務として正当であるうえ、原告らが東雲住宅から退去していないことや家賃・損害金が未納になっていることは秘匿性の高いプライバシー情報であるとはいえないから、原告らのプライバシ一権を侵害したとは到底いえない」
 原発事故後、福島県が建設した復興公営住宅は県内のみ。県外避難者のため避難先に復興公営住宅を用意することはしなかった。「逃げた県民を福島に戻す」。それが至上命題だったからだ。この点についても、福島県はこう主張している。
 「県外に復興公営住宅を設置しなかったとしても………被告が原告らの避難先を奪ったわけではない」
 「被告の当該措置は、子ども被災者支援法等の法令に違反するものでは全くない」
 そのうえで、こんなことまで行っているのだ。
 「そもそも原告らが指摘する子ども被災者支援法2条は基本理念を述べたものであり、被告に何らかの具体的義務を課すものではない
 ここまでくると、古川弁護士は呆れるしかない。
 「そんなことが本当に通用するのか。理念と施策が全然違っても構わないと言っているわけだから」

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柳原敏夫弁護士は報告集会で「福島県は今までで一番長い書面を提出した(14ページ)が、国際人権法に基づく居住権に関しては『原告の独自の解釈にすぎない』で終わり。中心論点をひと言で片付けるなんてあり得ない」と福島県の姿勢を批判した=衆議院第二議員会館


【「上位規範に適合する法解釈を」】
 閉廷後の報告集会で、柳原敏夫弁護士は「福島県は今までで一番長い書面を提出した(14ページ)が、国際人権法に基づく居住権に関しては『原告の独自の解釈にすぎない』で終わり。中心論点をひと言で片付けるなんてあり得ない」と福島県の姿勢を批判したうえで、次のように述べた。
 「最高裁大法廷は10月25日、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変更する際、生殖機能をなくす手術が必要になる『性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律』第3条の規定(生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること)を違憲とする判決を言い渡しました。判決理由のなかで、国際人権法について言及しています。大事なことは、上位規範に適合するように法律は解釈されるべきであるという基本原理を確認したということです」
 「このことは、トランスジェンダーの問題に限定されるものではありません。すべての問題は、このように上位規範に適合するように法解釈されるべきだと最高裁が宣言したようなもの。本件でも、国際人権法に適合するように災害救助法などの下位法律が解釈されるべきなのです。つまり、福島県に対して『なんという過ちを犯しているんだ』と言っているようなものなのです。次回期日では、このことを正面から取り上げます。福島県が頼りにしてきた最高裁が、とうとうあなたの方に刃を向けて県の間違いを指摘したときちんと主張したい。裁判所に対しても、国際人権法の問題を正面から判断せずには前に進まないと腹をくくってもらいたい。きちんと準備します。勝負に出ようと思います」
 なお、福島県は県議会に提出する「議案書」に被告となった避難者のフルネームなどを掲載しているが、避難者側は「プライバシー侵害だ。裁判所が匿名にする意味がなくなってしまう」として早急な対応を福島県に求めている。
 しかし、この点についても福島県は「議会に提出した議案書は県情報センターに来訪して閲覧申請した者が閲覧できるものであり、インターネットのような不特定多数の者が閲覧できるわけではない。地方自治法第115条(普通地方公共団体の議会の会議は、これを公開する)による地方議会の議事公開の原則の要請に基づくもの。このような対応は福島県以外の地方自治体 (地方議会) も行っている」と反論している。避難者側は公開差止訴訟を起こすことも視野に入れているという。



【住まいの権利裁判】2022年3月11日提訴。国家公務員宿舎から退去できずにいる11人が福島県の内堀雅雄知事を相手取り、住宅提供打ち切りや家賃2倍請求など福島県の施策で精神的苦痛を受けたとして、1人100万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。
 原告は福島県の避難指示区域外から原発避難し、都内や埼玉県内の国家公務員宿舎に入居し退去できないでいる(1世帯は退去済み)11人。
 ①福島県知事が応急仮設住宅としての住宅無償提供を2017年3月31日で打ち切った
 ②福島県が避難先で復興公営住宅を建設しなかった
 ③2019年4月1日以降、福島県が原告らを不法占拠者として扱い、親族訪問などの嫌がらせをした
この3つの違法事由によって精神的苦痛を味わったと主張している。


(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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