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【自主避難者から住まいを奪うな】「避難者を孤立させるな」。住宅打ち切りまで4カ月。「かながわ避難者生活支援ネットワーク」が始動。

原発事故で福島県から神奈川県に〝自主避難〟した人々を支援する「かながわ避難者生活支援ネットワーク」が26日、設立された。住宅の無償提供打ち切りを4カ月後に控え、地域に埋もれがちな避難者を孤立させまいと活動を展開する予定。打ち切り撤回を求めている避難者団体も支援する計画で、今年7月に都内で発足した「避難の協同センター」の神奈川版の役割を担う。あす28日から実施される福島県知事に対する直訴行動には、神奈川県内からも避難者が参加する予定。避難者を1人も路頭に迷わせまいと支援の輪が徐々に広がっている。


【「不幸な事、起こさせまい」】
 「ネットワーク」は、避難者交流会などを続けているNPO法人「かながわ避難者と共にあゆむ会」(鈴木實理事長、以下あゆむ会)を中心に、神奈川県内の支援者団体の連絡機関として設立。副理事長の高坂徹さんは「特に会長などは置かず、独自の規約も設けない。ゆるやかな情報交換の場として運営していきたい。喫緊の課題として来年3月末での住宅無償提供打ち切り問題があるので、どんどん輪を広げていきたい。避難者を孤立させてはいけない」と語る。
 4カ月後に迫る「打ち切り」。政府の避難指示の出ていない区域から福島県外に避難した、いわゆる〝自主避難者〟に対する住宅の無償提供に関しては、多くの避難者や支援者から見直しを求める要望が国や福島県に寄せられている。しかし、今のところ国は「福島県知事が決めた事」の一点張り。当の内堀雅雄知事も考えを変えていない。「除染などで生活環境が改善した」、「多くの人が避難せずに普通に生活している」などが理由だ。「あゆむ会」の鈴木理事長は福島県いわき市出身で、東京福島県人浜通り会の会長も務めるが「内堀知事に会うたびに直接、自主避難者の現状について何度も話をしてきたが、イエスともノーとも答えない。考えを覆すには至っていない」と語る。
 集会に参加した村田弘さんは、福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難中。これまで3度、転居し、現在は民間賃貸住宅に暮らす。「福島原発かながわ訴訟」の原告団長として原告団の取りまとめに奔走する一方、切り捨てられまいと国や福島県との交渉に多数回、参加してきた。今月28日からは、全国の自主避難者が連日、福島県庁の知事室に〝直訴〟する抗議行動を展開する予定だ。12月4日には福島市内で集会とデモ行進も計画されている。村田さんも当然、参加する。神奈川県内には今年5月現在、297世帯、770人が〝自主避難〟しており、打ち切りの対象となっている。
 「避難指示区域の線引きは政治的。放射能汚染の度合いと無関係になされた」と村田さん。「われわれ〝自主避難者〟は賠償らしい賠償を得ていない上に、いまだ線量の高い個所がある場所には子どもを連れて帰れない。福島県の打ち出した『新たな支援策』でいったい、どれだけの人が救われるのか。来年3月以降、何としても不幸な事が起きないようにするのが私たちの役目だ」と語った。神奈川県も県営住宅70戸分の優先入居枠を設けたが、収入要件などで18人の入居しか決まっていないという。このままでは多くの避難者が路頭に迷ってしまう。


「福島原発かながわ訴訟」の原告団長を務める村田弘さんが住宅打ち切り問題について報告。「来年3月以降、何としても不幸な事が起きないようにするのが私たちの役目だ」と語る

【「避難は自己責任ではない」】
 山田俊子さん(76)は、やはり南相馬市から神奈川県愛川町に避難した。原発が爆発した年の秋、自宅敷地内は1μSv/hを上回っていた。現在は行政の除染によって空間線量は下がったものの、0.3μSv/hを超える個所もあるという。「〝自主避難〟と言うが、身の危険を感じざるを得なかった人たちなんです。自己責任ではありませんよ。原発事故で追われたんですから」と語る。
 「全国避難者の会・かながわ」の共同代表を務めており、他の避難者と交流する事も多いが「『これからどうなるのかしら?』と不安を抱いている人は多い。一番、困っているのは住まいに関する事」という。「原発事故が無ければ皆、福島で人生設計を立てられたんです。家を建てたばかりで避難した人もいる。夫を福島に残して二重生活をしている人も大変。しかし、それにも理由があります。まだ原子力緊急事態宣言が解除されていないのです」。
 国は基準値を20倍に引き上げ「年20mSvを下回っていれば安全」とし、福島県も追認。2020年の東京五輪で世界に福島復興をアピールしようと避難者帰還政策を推進している。山田さんは「年20mSvまで大丈夫なんて、そんな場所に子どもを連れて帰れません。そんなの〝国民いじめ〟ですよ」と語気を強めた。
 「避難者だって、出来れば帰りたい人は多いんですよ。でも、帰りたくても帰れない状況なんだという事をぜひ知っていただきたい」と締めくくった山田さん。「東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream」(森松明希子代表)に寄せられた川柳「避難者あるある575」の中から三首を披露した。
 「フレコンの、前で子育て、それは無理」
 「帰還指示、だったら汚染、ゼロにして」
 「子の不調、その都度被曝に、思い馳せ」
 そんなに逃げたいのなら自力でやれ、と言わんばかりの福島県。そもそも避難指示区域の内外で賠償金の額に大きく差がつけられた〝自主避難者〟にとって、住宅の無償提供は唯一とも言える支援だった。打ち切りに伴って福島県が展開する「新たな支援策」とて2年間の期限つき。家賃の一部補助が軸で、福島に戻らない限りは転居費用も出ない。それが「切り捨て」で無くて何なのか。だからこそ、この「ネットワーク」が担う役割は大きいのだ。


「福島に帰りたくても帰れない状況なんだという事をぜひ知っていただきたい」と訴えた山田さん。把握できない避難者も多い中、ネットワークに寄せる期待は大きい=横浜市・かながわ県民活動サポートセンター

【難しい避難者の把握】
 〝自主避難者〟に関しては国も福島県も実態を正確に把握していないのが現状。一方で「もう帰れるのにまだ避難をしているの?」、「多額の賠償金をもらっているから避難を続けられるんでしょ?」という世間の無理解や誤解もあり、自主避難者の存在が表面化されにくい。
 住宅問題を軸に都内で避難者支援を展開する「避難の協同センター」代表世話人の加山久夫さん(明治学院大学名誉教授)も集会に参加し「活動をしていくうえでの一番の悩みは、避難者がどこにいるか分からない事。交流の場を設けるが、本来、届けたい避難者に情報を届けられていない」と苦悩を語る。さらに「避難者の置かれた状況は一人一人違う。数字で一概に表せない難しさもある」とも指摘する。
 「あゆむ会」の高坂さんも同様の苦悩を口にする。「国、福島県、私たちの独自調査、すべてで避難者数が違う。しかも個人情報保護の壁に阻まれて、神奈川県内の避難者に情報提供する事が難しい」。年明けから各市町村の社会福祉協議会の力を借りながら、地域に根差した交流会を進めていく計画を立てている。会の女性スタッフも「把握できていない避難者とどのように接触するかが以前からの課題」と話す。
 住宅問題への対応を重視する加山さんは「政府の避難指示が出ている区域からの避難者も、来春以降、避難指示が解除されれば途端に〝自主避難者〟と同じ立場に置かれる。健康問題も含め、原発事故はこの先、最大の公害問題になることを切実に危惧している」と警鐘を鳴らした。〝自主避難者〟は「避難指示も出ていないのに勝手に避難している」と責められるが、強制避難者も、今後は「避難指示が解除されたのに、まだ避難しているのか」という批判を受ける可能性が十分に考えられる。
 徐々に広がる避難者支援の輪。共通するのは「避難者を孤立させない」、「1人も路頭に迷わせない」の想いだ。



(了)
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鈴木博喜

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