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【自主避難者から住まいを奪うな】「私なら真っ先に帰る」。再び請願を不採択にした港区議会。区幹部も「被災県の想いを尊重したい」と打ち切り追認

東京・港区議会の総務常任委員会が11月30日午後、開かれ、4カ月後に迫った〝自主避難者〟向け住宅の無償提供打ち切りに反対する意見書の提出などを求めた請願を、賛成少数で不採択と決めた。原発事故により福島県双葉町から港区内に避難中の女性が趣旨説明。避難者の現状を訴えたが、区議らは「戻ってもらいたいという被災地の想いを尊重したい」、「私なら真っ先に帰るだろう」などと一蹴した。2日の本会議で正式に不採択となる見通しで、継続審査となった今年7月に続いて請願は採択されない事になる。今日から師走。原発避難はわがままか?福島に戻らないのは「復興」に逆行する行為なのか?


【「帰還を願う被災地の想いもある」】
 趣旨説明を聞くまでもなく結論は決まっていたのか。次々と反対意見が出された。
 榎本茂区議(港区民と歩む会)は、こう〝自主避難者〟の想いを否定してみせた。
 「港区が放射能に汚染される事態もあり得るだろう。その時は、私は避難先からこの街に真っ先に帰って来るだろうと思う。福島県は、いまだ甚大な風評被害を復興する事で跳ね除けたいと努力している。避難者の皆さんも歯を食いしばって頑張っていただきたい」
 避難を継続すると、まるで復興の妨げとなるかのような発言。さらに、副委員長でもある林田和雄区議(公明党議員団)も「(避難者が)ご苦労されている事は良く分かる」と言った上で、次のような反対意見を述べた。
 「一義的には被災地の考え方を尊重しなければならないし、自主避難者も港区民の一人として平等に扱われていると考えている」
 春に住まいを追われようとしている現状が、果たして「平等」なのだろうか。
 小倉りえこ区議(自民党議員団)も同様に「(避難者に)戻ってもらいたいという被災地の想いを尊重したい」と述べ、住宅の無償提供継続に反対した。請願に賛成したのは、いのくま正一区議(共産党議員団)のみ。赤坂大輔区議(東京維新の会)は「もっと避難者の実情を調査する必要がある」と継続審査を求めたが、賛成1、反対6で不採択が決まった。委員会は1時間足らずで閉会した。
 請願審議で、いのくま区議は「故郷に帰りたいという心情は当たり前。でも帰れない。福島県の要請が無くても、家賃負担が発生しないような支援を東京都に対して区が求める事が出来るのではないか」と区側に迫ったが、防災課長は「(避難者の)帰還を願う被災地の想いもある。それも支援しなればならない」とやんわりと〝拒否〟した。東京五輪に向け避難者減らしに全力を注ぐ安倍政権の意向が凝縮されたような委員会だった。




(上)「これ以上、避難者をいじめないで」と訴えた亀屋さん。だが、総務常任委員会の結論は「ノー」だった
(下)避難者支援に奔走する宮口さんは、資料を用意して避難者の「帰りたいけど帰れない」心情を説明した

【審議し尽くされなかった住宅問題】
 請願が求めていたのは次の4点。
①原発事故避難者への住宅無償提供継続を政府や福島県に求める
②希望する避難者全員が現在の住宅に住み続けられるよう、政府や都議会に働きかける
③家賃無償支援や都営住宅の優先枠拡大、空き家住宅のあっせんなどを東京都に求める
④避難者の孤立や生活困窮を防ぐため、就学支援や医療支援などに「避難者枠」を加える
 住宅無償提供の継続が請願の軸だったが、この日の審議では④の行政サービスにばかり焦点が当てられてしまった。
 港区防災課長は、把握できている57人の区内避難者(避難指示区域内外の合算)に対し、区民向け住宅への受け入れや学校への受け入れ、広報紙の配布、撤去後、保管期限を過ぎた自転車の提供など18項目にわたる行政サービスを港区民と同様に提供していると強調。小倉区議も「自主避難者にも行政サービスはされているという認識でよろしいですね」と念を押した。しかし、喫緊の課題として〝自主避難者〟たちが求めているのは行政サービスの充実ではない。住宅の無償提供継続、もしくは都営住宅への入居を阻む収入要件や世帯要件の緩和だ。それを港区として主体的に都や国に進言して欲しいというものだった。だが、すっかり論点がすり替えられてしまった。
 実は、今回の請願に対しては、この④が結果として足を引っ張ってしまったとの指摘がある。民進党系区議などで構成する第二会派「みなと政策会議」の榎本あゆみ区議は閉会後、こう明かした。
 「今朝も会派の中で不採択で本当に良いのか激しい議論があった。しかし、区としても行政サービスはきちんと提供している以上、それを否定するような請願に賛成する事は出来ない」。請願提出者に〝作戦ミス〟があった点は否めない。しかし、当事者や支援者がそこまでしないと安定した住まいすら得られないのだろうか。与党系会派に頭を下げて周到に根回ししないと、当たり前の権利さえ守られないのか。




(上)「もし港区が放射能に汚染されて避難する事になったら、私はこの街に真っ先に戻って来るだろう」と語り、請願に反対した榎本茂区議
(下)結局、請願に賛成したのは共産のみ。賛成少数で不採択となった

【「なぜ避難者がいじめられるのか」】
 冒頭、福島県双葉町から港区に避難している亀屋幸子さんが請願の趣旨説明を行った。
 「福島では174人の子どもから甲状腺ガンが見つかっており、転移しているケースもある。わが子を守ろうと避難した人を、そういう場所に帰すのか。避難者と同じ気持ちになって考えてください」と訴えた亀屋さん。
 時折、涙を浮かべながら「私も港区に来た頃いじめられました。地獄でした。『避難者のくせに良い靴をはいてて良いね』などと言われました。20日以上も外出出来ない日々が続きました。子どもたちだって同じです。『福島の子どもと遊んじゃ駄目だよ。放射能がうつるから』と子どもに言った親がいたそうです。そのせいで、ある子どもはすぐに福島に帰ってしまいました。住宅の無償提供が打ち切られれば、転居を余儀なくされます。また新たな地域に行って同じ想いをする危険性があります。私たちが何か悪い事をしましたか?何で、こんなに避難者がいじめられるのでしょうか」と大きな声で語った。
 また、港区在住で避難者支援に奔走している宮口高枝さんは、土壌汚染の実情や福島県内だけ年20mSvでも安全だとされている現状について、資料を配布して説明した。
 宮口さんは「一番、過酷な状況に置かれているのが自主避難者なんです。都営住宅を用意したと言っても要件が厳しい。福島県は戸別訪問で避難者の声を聴いていると言うけれど、いったんドアを開けたら足を入れて閉めさせないようにして退去を迫るようなケースもあるんです。港区民だって避難者になるような事態があるかもしれない。福島からの避難者が難民となるような事の無いよう、よろしくお願いします」と頭を下げた。
 避難者がどれだけ頭を下げても請願は採択されなかった。なお、区議や職員の中に、2人が必死に訴えている最中ごく一部だが居眠りをしていた者がいたことを書き添えておきたい。わずか十数分の訴えもまともに聴けないほどお疲れなのか。これもまた、原発避難者を取り巻く現状を如実に示している光景だった。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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