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【69カ月目の浪江町はいま】「受け入れ」か「延期」か。来春の避難指示解除巡り、町議会で質問相次ぐ。馬場町長は「総合的に判断する」と明言避ける

福島県浪江町議会の12月定例会が6日午前、二本松市の町役場二本松事務所で始まり、5人が一般質問に立った。質問の多くが、避難指示解除時期に対する馬場有(たもつ)町長の考え方に集中したが、馬場町長は「総合的に判断する」と明言を避けた。帰還困難区域を除き、2017年3月末で解除したい国。しかし、住民意向調査では「解除後も町に戻らないと決めている」がついに半数を超えた。汚染への不安が根強い中、馬場町長は3か月後の解除を受け入れるのか。原発の爆発事故から間もなく69カ月。町の再生は容易ではない。


【「ぜひ〝解除延期宣言〟を」】
 何度問われても、馬場町長の答弁は変わらなかった。
 「現時点で、避難指示解除の時期について、具体的な見解は持っていない」
 平本佳司議員は厳しい言葉で町長の見解を質す。「来年3月を目標に日夜努力している事は理解しているが、様々な問題が山積している。除染も終わっていないし、課題を挙げればキリがない。まだまだ時間が必要だ。それでも、国の言われるままに来年3月に避難指示解除を受け入れるのか。以前から年明けに考えを示すと言っているが、既に心の中では決まっているのではないか。だとすれば、きちんと町民に示すべきだ」。
 それでも、馬場町長は淡々と答えるにとどまった。「政府は年明けにも、3月末での避難指示解除を明示してくるだろう。今月20日には町除染検証員会の報告書が提出されるし、今後、予定されている住民懇談会でも様々な意見が出されるだろう。それらを総合的に判断して決めたい」。
 町の「避難指示解除に関する有識者検証委員会」(吉岡正彦委員長=ふくしま自治研修センター総括支援アドバイザー兼教授)は今年3月、除染による一定の線量低減効果を認めた上で「2017年3月に帰還することを目標とするなら、その前に実施される必要のある準備宿泊の時点で、避難指示解除準備区域及び居住制限区域は、町民の居住エリアのうち大部分で確実に除染が一巡しているべきである」などとする報告書を馬場町長に提出している。
 平本議員は「あと3カ月では到底、終わらない。国からの明示を待つのではなく、先に町の側から『来年3月に避難指示を解除する見込みは立たない。少なくとも半年は延ばしてくれ』というような話は出来ないのか」と町長に迫った。それでも、馬場町長は「現在、政府とせめぎ合いをやっている。避難指示を解除してハイさようなら、では町は復興出来ない。財政的な担保をきちんととっていきたい。それを今やっているところだ」と答えるばかり。
 「あと3カ月で避難指示解除など出来るのか、甚だ疑問だ。ぜひ早い段階で解除の延期を示していただきたい」。平本議員は要望したが、町長からの返事は無かった。




(上)来年3月末での避難指示解除を受け入れるのか、町議会での質問にも明言しなかった馬場町長=浪江町役場二本松事務所
(下)6日に始まった浪江町議会12月定例会。一般質問では、避難指示解除の時期について馬場町長の見解に関する質問が相次いだ

【「町に戻らない」半数超える】
 馬場町長が「残念ながら…」と語るデータがある。復興庁、福島県、浪江町が今年9月に実施した「住民意向調査」(回収率53.6%、4867世帯)の結果速報版が11月25日に公表され、「避難指示解除後も、浪江町に戻らないと決めている」が52.6%に達したのだ。昨年同時期に実施された調査結果と比べて4.6ポイント増えた。「すぐに・いずれ戻りたい」は17.5%で0.3ポイント減。「まだ判断がつかない」は3.3ポイント減の28.2%だった。「戻らないと決めている」の割合は、2013年以降37.5%、48.4%、48.0%で、初めて過半数に達した。戻らない理由は「原子力発電所の安全性に不安がある」、「医療環境に不安がある」、「放射線量が低下せず不安だ」が多かった。
 原発事故による避難生活が長期化。町の再建が徐々に見通せるようになっているのは、常磐線・浪江駅の東側に位置する中心部ばかり。議会でも「まるっきり町場だけの復興拠点づくりをしているのか」という指摘が飛んだ。沿岸部は津波によって壊滅的な被害を受け、戻る家すら無い。避難先で新たな住まいを確保した住民は、住み慣れた故郷に戻りたいという気持ちは抱きながらも現実的には帰れないという判断が多くなるのもやむを得ない。調査結果から単純試算すると、仮に来年3月末で避難指示が解除されたとして、多く見積もっても500世帯ほどしかすぐには町に戻らないのが実情だ。
 今年10月、自宅が居住制限区域に指定された住民の元に届いた「除染結果報告書」。7月に実施された除染から3カ月後の空間線量率(高さ1㎝)は、0.29μSv/hという個所もあるが、0.71、0.67、0.56μSv/hという数値が並ぶ。中には除染をしても1.47μSv/hにまでしか下がらない個所もあった。同じ行政区に自宅のある別の住民は、除染前の数値が最も高い個所で16.20μSv/hと酷い汚染。除染で下がったとはいえ、それでも0.68、0.74、0.89μSv/hもある。内閣府や復興庁の官僚は「年20mSvを下回れば問題無い」と、帰還困難区域を除いた地域の来年3月末での避難指示解除を目指しているが、これが実態だ。あと3カ月で被曝リスクが無くなり、子育て世代が安心して戻れるようになるとは考えにくい。




(上)今秋の住民意向調査では「避難指示解除後も浪江町に戻らないと決めている」が初めて半数を超えた
(下)町に戻らない理由は様々だが、廃炉作業や被曝リスクに対する不安が上位を占めている

【2%にとどまった「特例宿泊」】
 もちろん、議員の間にもさまざまな考え方がある。渡邉泰彦議員は、一般質問で「私自身は年20mSv以下になれば問題無いと考えている」、「環境省のメッシュマップによると、3.8μSv/hを超える地点が2011年度は町内に274あったのに、今年度は35に減った。逆に0.23μSv/h以下の地点は22から341に増えている。相当きれいに除染されているな、相当安心出来る線量になっているのではないか」などと前向きな発言をした。
 だが、多くの町民が現在の町に「安心」出来ていない事は、9月に実施された「特例宿泊」の利用者が26日間で131世帯、269人にとどまった事からも分かる。これは、対象区域の住民のわずか2%程度にすぎない。ホテルなみえへの宿泊者は77人だった。紺野榮重議員は「大変厳しい。今後の復興に厳しさを感じる」と語ったが、これが原発事故の現実だ。
 11月1日からは避難指示が解除されるまでの「準備宿泊」が始まっている。今月1日現在の宿泊者は148世帯、356人。事前申請では15歳以下の子どもが5人含まれているが、今のところ実際に町内に泊まっていないという。
 平本議員は、役場職員の被曝リスクにも言及。現在は町内の本庁舎と二本松事務所とで業務を行っているが、来年4月にも役場機能を町内に戻す計画を進めている。「現在も、喜んで本庁勤務をしている職員ばかりでは無いだろう。避難指示が解除され、本庁勤務になったら退職すると考えている職員はいないのか。職員に選択の自由はあるのか」と質した。宮口勝美副町長は「10月以降、職員へのアンケート調査と面談を実施した。多くの課題が見えてきた。しかし職員の絶対数は限られており、すべての希望を受け入れる事は出来ない」と答えるにとどまった。 
 12日の町議会全員協議会では、内閣府や復興庁の官僚が出席して今後の避難指示解除について改めて説明する予定になっている。誰もが故郷再生を願うが、汚染への不安もまた根強い。東京五輪を見据え、避難指示解除を強行したい国。時期尚早だと考える町民。「避難指示が継続されることによって復興の足かせになっている事もまた事実」と話す馬場町長は、どのような決断を下すのか。「前向きに頑張ろう」だけでは語れない難しさをもたらしたのもまた、原発事故だった。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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