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【続続・原発事故と〝いじめ〟】放置されてきた避難者たち。黒澤知弘弁護士が横浜で講演。「苦難に遭っていない避難者などいない」「想像力働かせて」

「原発避難に係わる横浜いじめ問題を考える集い」が22日夜、神奈川県横浜市のかながわ県民活動サポートセンターで開かれ、神奈川県内に避難した人々の集団訴訟「福島原発かながわ訴訟」の弁護団事務局長を務める黒澤知弘弁護士(馬車道法律事務所)が講演。「苦難に遭っていない避難者など1人もいない」、「想像力が国全体に広まって欲しい」などと語った。〝いじめ〟の裏に潜む避難・被曝リスク回避への無理解。避難の権利を認め、すべての被害者が救済される社会を目指したい。NPO法人「かながわ避難者と共にあゆむ会」(鈴木實理事長)の主催。


【普遍的な〝避難者いじめ〟問題】
 「苦難に遭われていない方を、少なくとも私は1人も知りません」
 訴訟を通じて避難者の苦悩と向き合ってきた黒澤弁護士らしい言葉だった。
 被害少年の手記が公表された事もあり、〝原発避難者いじめ〟問題は横浜から全国に波及。にわかに注目が集まっている。しかし、実は原発事故直後から被害者の苦しみは始まっていた。そして、それは今も続いている。大手メディアで取り上げられているのは「氷山の一角」に過ぎない。「『心無い言葉を掛けられる事はかなりあった。ずっと我慢してきた。それは自分だけでは無い』という話をたくさん耳にして来ました。多くの原発避難者に共通する普遍的な問題なのです」。
 「福島原発かながわ訴訟」の原告から提出された陳述書を改めて精査したところ、8世帯が避難後に〝いじめ〟を受けた旨を記述していた。しかし、それだけ普遍的な問題にもかかわらず、これまでほとんど表立って語られる事は無かった。「大っぴらに避難者であると言えず、当事者が声をあげられずに水面下に置かれてきました」と黒澤弁護士。それはなぜか。黒澤弁護士は「極めてプライベートな部分であるし、被害の実相が重た過ぎて広く発信出来ない。全てをリアルにお伝え出来ないもどかしさがあります」と語る。
 「誰も好き好んで福島県外に来ているわけではありません。原発事故によって、やむにやまれず避難しているのです。賠償金と言ったって、見かけ上は大きな金額が動いたように見えるが、以前の生活よりプラスになっているわけではありません。ましてや避難指示区域外からの〝自主避難者〟が得たのは〝スズメの涙〟です。費用に要した実費の方がはるかに大きい。本来なら国や行政が避難者の困難な生活を把握していないといけないのに、実際には避難者数すら把握していません。避難先で苦労している方々をずっと放置してきたのです」


原発事故による避難者が味わっている苦難について「想像力を働かせて欲しい。想像力が国全体に広まって行けば、少しは状況が変わるのではないか」と語った黒澤知弘弁護士=横浜市・かながわ県民活動サポートセンター

【非人道的な住宅打ち切り】
 「これからを担う子どもたちに、原発事故で様々な影響が出ている」と語る黒澤弁護士。一方で、迫害を受けてきたのは子どもたちばかりでは無い。「大人も同じです。車を傷つけられたとか、職場などで『どうせ腰掛けだろ』、『まだこっちにいるの?いつ福島に帰るの?』などと心無い言葉を浴びたとか。自分の居場所が無くなってしまう事態をかなり多くの人が経験しています。原発事故で本当に多くのものが失われて避難して来ているのに、故郷に戻らない事が悪いかのような無理解が存在します。しかし、放射線はそんなに甘くないですよ」。
 各地を転々とし、ようやく定着出来た避難者もいる。しかし、政府の避難指示が出ていない区域から避難したというだけで〝自主避難者〟たちは来年3月末で住宅の無償提供が打ち切られる。災害救助法に基づく「みなし仮設住宅」の無償提供は1年毎に延長されて来たが、福島県の内堀雅雄知事は来年4月以降は延長しない事を決めている。福島県の用意した「新たな支援策」は民間賃貸住宅に転居した避難者のみが対象で、収入要件をクリアした場合に2年間だけ家賃の一部が補助される。全国の受け入れ自治体が公営住宅の優先入居枠を用意してはいるが、世帯要件など様々な「要件」が障壁となり現実的に受け皿となり得ていない。〝自主避難者〟たちが「せめて1年間の猶予を」と無償提供継続を訴えているのはそのためだ。
 黒澤弁護士は「ようやく定着できた避難者が、住宅を切り取られるような事が許されて良いのでしょうか。血の通った人間ならば躊躇して出来ない、非人道的とも言うべき事が平然と行われようとしています。四重苦、五重苦という方は実際にいらっしゃるんです。普通の災害や事故ではあり得ない仕打ちを避難者は受けています。許してはなりません。今の住まいに住み続けられるようにするだけでかなり違うのです」と訴えた。


じっと耐えてきた原発避難者たちが少しずつ、悔しさを口にし始めた。福島県富岡町から横浜市内に避難中の今里雅之さん(「かながわ東北ふるさと・つなぐ会」会長)は「『早く帰れ』、『いつまで避難してるんだ』など大人も〝いじめ〟に遭ってきた。政府をあげての帰還方針は本当に腹立たしい」と語る。

【「全ての被害者が救済されるべき」】
 「被害を覆い隠そうとするのは原爆と同じ構図。国の欺瞞は許されてはなりません。避難する方、しない方、強制避難も自主避難も、全ての被害者が救済されるべきという原点に立ち返りましょう」と呼びかけた黒澤弁護士。こんな言葉で講演をしめくくった。
 「本来は被害者が直接、話す方が訴える力はあるでしょう。しかし、矢面に立つのはかなり難しいのです。ぜひ想像力を働かせてください。表面上は明るく振る舞っていても、不安を抱えながら避難生活を送っているのです。想像力が国全体に広まって行けば、少しは状況が変わるのではないでしょうか」
 集いに参加した松尾弘美さんは福島県浪江町から神奈川県鎌倉市に避難中。民生委員として、原発事故直後から〝いじめ〟の実態を耳にして心を痛めてきた。「この5年9カ月、いじめられている子どもは常にいました。幼稚園の年長さんや小学校低学年の子どもたちが、避難してきた子どもの事を『汚い』と言うのです。どうしてそんな事言うの?と尋ねたら『ママが、放射能がうつるから遊んじゃ駄目って言うから』と答えるんです。新潟に避難した中学生の女の子は『お前は(被曝したから)結婚できない、子どもを産めないんだ』などと暴言を浴びせられて学校に通えなくなってしまいました。親が間違った認識を子どもに植え付けて欲しくありません」。
 「かながわ東北ふるさと・つなぐ会」には宮城や岩手からの避難者も参加して交流しているが「私たちは原発被害者ではないから賠償金をもらっていない」などと〝本音〟が出ると心苦しいという。「いわき市にも双葉郡からの避難者がいますが、津波被害に遭ったいわき市民も同じように仮設住宅に入居しました。そこで『夜、スナックを飲み歩いているのは双葉郡の原発避難者だけ』という話になるんです。でもね『酒でも呑まなきゃやってられないよ』という声もあるんですよ」。加山久夫さん(「避難の協同センター」代表世話人、明治学院大学名誉教授)は「分断を乗り越えないと抜本的な解決にならない」と指摘する。
 福島県郡山市から神奈川県川崎市に避難中の松本徳子さんもマイクを握った。
 「賠償されるのは当たり前なのに、賠償金をもらっていると言われてしまう。勝手に線引きされて、何をわがまま言っているんだと片付けられてしまいます。どうして避難しなければならないのか考えてください」
 福島第一原発の爆発事故から間もなく6年。「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」は22日、「原発事故被害者の現状が十分に理解されていないことが、いじめや嫌がらせにつながっている」などとする声明を発表した。被曝リスク回避や避難への無理解はもう、終わりにしたい。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)

大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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