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【69カ月目の福島はいま】年内最後の福島県知事定例会見。「復興への光強まった」「いまだに誤解や偏見ある」と〝内堀節〟満載。人口減少歯止めにも意欲

内堀雅雄・福島県知事の年内最後となる定例会見が26日午前、福島県庁で開かれ、来年の復興加速・帰還促進に意欲を見せた。今年の漢字は復興創生の「創」。著しい人口減少対策に取り組みながら、新しい福島創りに励むという。避難指示解除やJR常磐線の一部再開通など「復興」を強調する内堀知事だが、一方で〝自主避難者〟向け住宅の無償提供打ち切りが3カ月後に迫る。福島県庁は明日28日が仕事納め。しかし、県外避難者たちの厳しい冬は始まったばかりだ。


【「常磐線は復興のシンボル」】
 原発事故からの復興加速と避難者の帰還促進。ある意味、内堀知事らしさが凝縮された年末の定例会見だった。
 会見の冒頭、内堀知事は今年1年を「葛尾村、川内村、南相馬市の避難指示解除など、復興への明るい光が一層の強まりを見せた」と振り返った。一方で、原発事故避難者に対しては「依然として8万人もの人が故郷を離れた6度目の年末年始を迎えている。一人一人の想いを念頭に置き、生活の再建や産業の再生など復興への取り組みを着実に進める」とも語った。住宅の無償提供が3月末で打ち切られる〝自主避難者〟への言及は無かった。住宅打ち切りに関する記者クラブからの質問も出なかった。
質疑応答は「復興」に関する話題が中心。福島中央テレビの記者から「復興が前に進んでいると実感したエピソード」を問われ、内堀知事は「子どもたちとのふれあいが私にとって大きな力となっている」として、福島市の中学生が自分たちで観光プランを立案して実際にツアーを行った事、喜多方市の小学生と一緒に稲刈りをした事を挙げた。NHK記者は「明るい光」の具体的な中身について質問。内堀知事は「12月10日のJR常磐線の一部区間再開通(相馬~浜吉田)」と答えた。「安倍総理もおみえになった。だいぶ寒かったが、ものすごく多くの方々が再開通を笑顔で喜んでいるのを見て、あっやはりこれが復興が前に進む一つのシンボルなんだなと実感した。ハード面だけでは無いが、こういった事を積み重ねていく事が大事なんだ」。
 「風評被害」に関する言及では、さすがに舌が滑らか。「誤解や偏見がある。せっかく積み上げて来たものが壊れてしまう。何としても克服しなければならないんだ」と強調。共同通信の記者は台湾が依然として福島県産食品の輸入規制を続けている事について質したが「タイやベトナム、マレーシアなどある程度、緩和された動きもあるが、科学的知見ではない見方によって理由無く輸入が規制されるという事はやはり、風評の一つの表れだと受け止めている。技術的、科学的な知見を冷静に情報提供して、安心安全は当然、おいしいものが福島からも輸出できるんだという事を実直に伝え続ける事が重要」と述べた。


今年10月に亡くなった福島県三春町出身の登山家、田部井淳子さんの言葉を引用しながら、県庁幹部たちを「人口減少を何としても食い止めるんだという危機意識を共有したい」と鼓舞した内堀雅雄知事=福島県庁・特別室

【「笑顔で『お帰りなさい』伝える」】
 産経新聞の記者から「今年1年を漢字一文字で表すと?」と尋ねられ、復興創生や新産業の創出から「創」と答えた内堀知事。あらかじめ書を用意していたのは、日ごろの記者クラブとのお付き合いの賜物か。「来年も新しい福島を創り上げる。その先頭に立って頑張らなければならない」と笑顔で語った。
 内堀知事の言う「新しい福島」。そこには、避難指示解除で帰還する人々、住宅の無償提供打ち切りを機に福島に戻る人々も含まれる。「今後、全国に避難されている方々のうち一部の方が福島県内に戻られてくると思う。お帰りなさい、これまで大変だったね、これからまた一緒に頑張ろう、そういうメッセージを笑顔で皆さんにぜひ届けていきたい」。避難を継続する人々への言葉は無かった。なぜなら、内堀知事は「人口減少」という大きな苦悩を抱えているからだ。
 定例会見の冒頭あいさつで「厳しい人口減少が続く」と表現した内堀知事。12月1日現在の福島県の推計人口は189万8157人で、原発事故前年の2010年12月1日と比べると6年間で12万9816人減った。会見後に開かれた「第6回地域創生・人口減少対策本部会議」では県庁内の各部局長を前に「全国でもトップレベルの減少幅だ。何としてもこれを食い止めるんだという危機意識を共有したい。人口減少を食い止めるんだ、復興を前に進めるんだという強い意志の下、取り組んで欲しい」と語って鼓舞した。
 行政は原発事故発生直後から一貫して避難や移住に消極的だった。被曝リスクから住民を守る事よりも、自治体の存続を重視してきた。帰還困難区域を除く避難指示が続々と解除される来年は、帰還の流れがますます加速する。
 しかし、福島県の「総合計画審議会」が10月13日に内堀知事に提出した「福島県総合計画『ふくしま新生プラン』に係る平成28年度施策取組状況評価に関する意見書」の中で、次のように言及している点は見過ごせない。
 「避難指示区域の解除が進み住民の帰還が加速化されているが、県内外で避難生活を続けている県民一人ひとりの思いに寄り添った支援を継続する必要がある」


年内最後の〝御前会議〟。春には、飯舘村など帰還困難区域を除く避難指示解除が予定されている。2017年も「公共事業型復興」と「避難者帰還」の流れが加速する

【「放射線への正しい知識を」】
 口では「寄り添う」と言いながら、避難者切り捨てを強行する内堀知事。福島市や郡山市、いわき市など政府の避難指示が出ていない区域からの〝自主避難者〟向け住宅の無償提供は、来年3月末で打ち切られる。「せめてもう1年の猶予を」などと避難者は継続を訴え続けてきたが、内堀知事の意思は固い。避難者団体は知事との面会・直接対話を求め続けたが、応じたのは打ち切り後に始まる民間賃貸住宅入居者向け家賃補助の部分修正のみ。「県全体として対応する」と、避難者との対話の場に内堀知事が顔を出す事は最後まで無かった。
 「もはや福島は安全」という情報発信には熱心だが土壌汚染の実態や被曝リスクの存在には一切、触れない。今年は福島県外に避難した人々への〝いじめ〟が問題視された。しかし、行政が「避難の合理性」を公的に認めない以上、大人も子どもも、避難先で〝逆風〟に直面するのはある意味、当然だ。内堀知事はこの日の会見で「〝いじめ〟の報道を見るたびに切ない想いになったし、重く受け止めている。いろんな誤解を解いていく努力というものを、われわれ自身が進めていきたい。そのうえで、放射能あるいは放射線に対する正しい知識を、福島県内はもとより出来るだけ全国で持っていただくという事が重要だと思う。そういった場面を増やしていただけるような取り組みを政府に対して求めて行きたいと考えている」と語ったが、知事の言う「正しい知識」とは何だろうか。結局、それは被曝リスクを避けるために福島を離れた人々を否定する事にはならないか。
 避難指示解除、住宅の無償提供打ち切りと、原発事故被害者にとって2017年は大きな転換期を迎える。23日に都内で開かれた「ふくしま大交流フェア」では、トークショーで「私も時々、落ち込んだり苦しくなることはあるんです」と〝弱音〟を吐いた内堀知事。来年はぜひ、原発事故被害者の「苦しみ」を理解する1年になるよう願いたい。



(了)
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鈴木博喜

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